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2006年09月 アーカイブ

2006年09月01日

超敬語

岩波書店の”図書”の9月号で中井久夫先生が”センテンスを終える難しさ”という小文を書いています。
日本語の文末処理の難しさとおもしろさについて考察というか思いついたことを書きつづっておられます。
医者が使う”超敬語”についての話もありこれはおもしろいです。
ところで図書の広告によれば、イリイチのシャドウ・ワークが岩波現代新書になって出るそうです。

いったいいくらほしいんだい

NIKKEI NET:研修医、大学病院に不満「雑用多い」・厚労省調査
どういう調査かはっきり解らないので、これに何か言うのも何なのですが一言。

新聞ではもう少し詳しく結果が報道されておりそれに依れば、

雑用が少ない
市中病院:26.9%
大学病院:3.9%

待遇がよい
市中病院:23.9%
大学病院:5.1%
となっています。

確かに研修医の不満は大学病院へ多く向かっているようです。

しかしよく考えると
雑用が多いとおもっている
市中病院:73.1%
待遇が良くない
市中病院:76.1%
であるわけです。
一体、この人たちのいう”雑用”とはなんなのでしょうか。また研修医がいくらくらい給与があると満足なのでしょうか。

ketamine as anti-depressant

Arch Gen Psychiatry -- Abstract: A Randomized Trial of an N-methyl-D-aspartate Antagonist in Treatment-Resistant Major Depression, August 2006, Zarate et al. 63 (8): 856

今日知ったのですがケタミンには鬱病の治療薬としての作用があるようです。
一回のinjection、doseは0.5mg/kgですから結構な量ですが、で効果が二時間程度で現れ、一週間は持続するそうです。
ぼくならECTの前にこっちを選びます。

2006年09月03日

"入局説明会"でグルると

今日、所属教室の専門修練医の先生方への入局説明会を開きました。
遠くから出席していただいた先生方ありがとうございました。といってもこのブログを読んでいないと思いますが.

今日、発見したのですが、ぼくのcomputerから”入局説明会”でgoogleサーチを行うとぼくらの教室のpageが上から4番目に来ます。

なんでだ !?

2006年09月08日

植物状態の患者に意識がある

今日Webで公開の雑誌Scienceに”植物状態”の基準を満たす患者に”意識”があるというevidenceがfunctional MRI上観察されたという報告が発表されています。


Detecting Awareness in the Vegetative State -- Owen et al. 313 (5792): 1402 -- Science

New York Timesでも報道されています。
Vegetative Patient Shows Signs of Awareness, Study Says - New York Times

<追記>
少し前のJCIでminimally conscious stateからの回復の可能性を遅くできるかも知れないという論文が出ていました。

Tracking the recovery of consciousness from coma" (hypoxia research::blog)

こういった分野は臨床医が大いに貢献できる分野です。ネズミの遺伝子破壊の論文とはことなり世界中の人々の大きな関心の中心をなしている立派な仕事だと思います。


効果があると思っている人なんていないよ

asahi.com:人気の「酸素入り水」に効果なし? 国立健康・栄養研?-?暮らし
こんなこと今更言われても.. 普通に考えたら解るだろう。効果があると思って飲んでいる人などいるのかな

"NIH Launches Knockout Mouse Project"

NIH Launches Knockout Mouse Project
だそうです。
良いことなのでしょうね。
一部には余計なことしてと思う人もいるかも

神経系が免疫系を支配する

PLoS Medicine: Regulation of Peripheral Inflammation by Spinal p38 MAP Kinase in Rats
神経ー免疫ー内分泌連関
この論文の発見のすごいところはp38 MAPKのinhibitorが痛みの軽減に役に立つということでなく中枢神経が末梢組織の炎症反応を制御していると言うことなのだと思います。

2006年09月09日

今週の一押し35:"いつか王子駅で”

いつか王子駅で
駅の書店で買いました。
長編といってもさっと読める長さです。
堀江氏の著作の特長がよく出ている一編。
ぼくのrotation listに入れました。

2006年09月10日

VNS Therapy

重傷のうつ病や薬剤抵抗性のてんかんの治療に頸部で迷走神経を刺激するという方法があります。
VNS therapyと云うのだそうです。
Vagus Nerve Stimulation Information at VNSTherapy.com

deviceもFDAの認可を受けています。
VNS Therapy System - p970003s050

以前にも紹介したことがあると思ったのですが今日New York Timesでもまた取り上げられていました。
Battle Lines in Treating Depression - New York Times

NYTにうつ病の治療に関する記事が載る頻度は凄く多いのですが米国でも罹患者が多いのでしょうね。

2006年09月12日

ずるい

Prostaglandin E2 receptor EP4 contributes to inflammatory pain hypersensitivity -- Lin et al., 10.1124/jpet.106.105569 -- Journal of Pharmacology And Experimental Therapeutics
こんな内容で載るなんてずるい、と思います。

がんばったわりには...

Placental but not Heart Defect Is Associated with Elevated HIF{alpha} Levels in Mice Lacking Prolyl Hydroxylase Domain Protein 2 -- Takeda et al., -- Molecular and Cellular Biology
こっちはいろいろやっています。

2006年09月16日

今週の一押し36:"カラマーゾフの兄弟"

カラマーゾフの兄弟1

最近海外の小説の新訳がどんどん出版されるようになってきています。
”星の王子さま”、”キャッチャー・イン・ザ・ライ"や”嵐が丘”などの古典の新訳が出てきて、読んでみるとやはり新鮮に感じます。
今回、”カラマーゾフの兄弟”の新訳が出ました。ぼくは新潮文庫の原卓也氏の訳でしか読んだことは無かったのですが、新訳はやはり読みやすいです。
カラマーゾフの兄弟 上   新潮文庫 ト 1-9

カラマーゾフの兄弟や罪と罰などを読んだことのない研修医や大学院の先生がいてびっくりします。読んだ方がいいですよ、出来るだけ若いうちに。

統計の本

ぼくの研究で複雑な統計手法を使うことはほとんど無く、それゆえあまり統計について勉強することが無かったのですがこれではいけないと思い一冊読んでみました。

臨床医による臨床医のための本当はやさしい臨床統計―一流論文に使われる統計手法はこれだ!

実際の論文の統計を解説する形の本書はとてもわかりやすく、こんなぼくでもなにか一つしっかりと計画から練って臨床研究をしてみたくなりました。

2006年09月17日

Lasker Awards 2006

2006年のLaskar賞の受賞者が決まったようです。
The Lasker Foundation | Awards | This Year's Winners

特筆すべきはAaron T. Beckの受賞だと思います。

低酸素室の禁止は見送り

NIKKEI NET:スポーツ 低酸素室の禁止は見送り・世界反ドーピング機関
低酸素室に入らなくとも同じ効果の得られる非禁止低分子化合物は結構あります。これらをすべて検査するのは無理だしね..

[追記]
こんなのだそうです
◆施設/国立スポーツ科学センター:独立行政法人日本スポーツ振興センター 低酸素合宿室

2006年09月18日

一種の業務連絡

昨日から集中的に論文の作業をして一つは95%もうひとつも90%は完成。
目がしょぼしょぼになりましたが、一気に作業が進みよかったです。
最後の20%くらいが一番きついです。figureを投稿グレードに仕上げるのでもそれなりに気をつかい時間が結構かかります。

今回のものは、特に論理的にしんどいところも無いはずなのですがだらだらと時間がかかってしまい皆に迷惑をかけてしまいました。すみません。

今日は朝から研究室に出て作業をしていたのですが4時頃からnetの具合が悪くなり大学の外に出て行けないような状況になってしまいました。当直帯に入ったらすぐ緊急手術が入り、終わった後研修医の先生と弁当を食べ作業を再開してしばらく経った23時頃突如netが復旧。やっぱりあるとないとでは作業効率が違うな。

新潮文庫の二冊

毎日新聞を開くと二面の下段に新潮文庫の広告がありました。
”水曜の朝、午前三時”と”夜のピクニック”
の二冊を大々的に宣伝してました。
水曜の朝、午前三時

夜のピクニック

ちょうど昨日、児玉清氏の推薦文が帯についてたので"水曜の朝、午前三時"を読んだばかりでした。小説としてのできは多分そんなに良くないのでしょうが不意打ちにあったような気がして泣きはしなかったけどかなり満足できました。

錦繍

ノルウェイの森 上
のような恋愛小説と較べると100%に欠ける所があるような気がしましたが、大阪、京都の知っている場所も出てきて感情移入もできて良かったです。

第四回”がんとハイポキシア研究会”

4回目となる”がんとハイポキシア研究会”ですが、今回は京都で開催です。
「がんの微小環境」をテーマに開かれる「高松宮妃癌研究基金国際シンポジウム」での演者より下記の4名を招待して
初日の11月17日(金)にオープンでのシンポジウム。
Dr. Harold L Moses        Vanderbilt-Ingram Cancer Center
Dr. Kornelia Polyak        Dana-Farber Cancer Institute
Dr. T. Van Dyke             Lineberger Comprehensive Cancer Center
Dr. Peter Vaupel            University of Mainz

翌18日(土)は日本語での研究会を行います。

場所は京大会館です。

詳しい案内は多分明日というかもう今日、HPでお知らせできると思います。
[追記]
http://square.umin.ac.jp/chypoxia/ここからたどれます。

ノーベル賞予想

今年のノーベル賞を予想しておきます。
Pierre Chambon , Ronald M. Evans
核内受容体の研究でどうかな。
もういい頃だと思いますけど...

2006年09月19日

12/5発売

Hannibal Rising - Books - Report - New York Times
Hannibal Lecter博士が戻ってくるそうです

メサンギウム増殖性糸球体腎炎とHIF-1 pathway

腎臓が低酸素に弱いのも部分的にはこのメカニズムで説明できるのでしょうか
この論文ではメサンギウム細胞での関与を強調しているので今後の検討が必要なのだと思います。
Loss of the tumor suppressor Vhlh leads to upregulation of Cxcr4 and rapidly progressive glomerulonephritis in mice - Nature Medicine

Hypoxia pathway linked to kidney failure - Nature Medicine

Visfatin

ScienceDirect - Biochemical and Biophysical Research Communications : Visfatin in adipocytes is upregulated by hypoxia through HIF1α-dependent mechanism
Leptinに続きVisfatinも

2006年09月24日

最近の話題から

ここのところ論文の作業の最終段階ですの更新をさぼっています。
大阪大学の捏造問題は自死を選択した(そうとは考えていない人もいるようです)研究者も出て深刻な問題になっています。今回はかなり厳しい処分が下されるのだと思います。

阪大の論文不正、教授が捏造認める…2本で8か所 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

しかし、どんなに規則を厳しくしても捏造は無くならないと思います。本気で捏造されたら見抜くことは強制的な調査無しに査読の段階で他の科学者が見抜くことはできません。
最前線の研究はそれでもましなのかも知れません。”画期的な”発見が発表されれば一斉に追試験がはじまり、その発見の位置づけが自ずと定まっていきます。一方、誰も追試をしてくれない論文はそのまま埋もれていくだけになってしまいます。
自分は人類の叡知の全身に貢献しているのだという気持ちだけは持ち続けないと行けないのだろうと思っています。

asahi.com :94歳私の証・あるがまま行く - 麻酔科医不足を解消するには

病気、けがが早く治癒してその後の人生が幸福に送ることができることが患者さんの求めていることだろうと思います。医療は、本来その手段であるということには、医療の提供者も受け手の双方に異論のないことだと思います。
患者が同意すれば看護師が麻酔を担当することもあって良いと思いますが、臨床の現場では患者は一様な背景を持っているわけでないので、社会的な約束でそれを決めていくしかないということになり、そこが問題のはじまりと言うことになると思います。
それぞれの現場では麻酔科医と外科系医師、看護師の連携というものが取られていて看護師の麻酔への関与も現在でもかなりあるという病院もあると思います。
とにかく麻酔科学会はこういった問題に一定のスタンスを取る必要があるでしょうが様々な考えを持つ会員がいるので執行部は大変だと思います。

肺移植数が増加しているそうです

Lung Patients See a New Era of Transplants - New York Times

2005年になって米国では肺移植の数が伸びておおくの患者さんが助かるようになったという話です。
移植制度の改定が大きな原動力だと解説されています。

今週の一押し37:"アンドロイドは電気羊の夢を見るか?"

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?


"The New Yorker: MIND GAMES"
を読んでいたら急に思い出しました。
ディックの本なら流れよわが涙、と警官は言ったも好きです。

2006年09月26日

HO-2の低酸素感知に関する関与の普遍性について

Acute Oxygen Sensing in Heme Oxygenase-2 Null Mice -- Ortega-Sa´enz et al. 128 (4): 405 -- The Journal of General Physiology
これはかなり重要な発見だと思うのだが..

TRXのinhibitionなのか!?

Novel Thioredoxin Inhibitors Paradoxically Increase Hypoxia-Inducible Factor-{alpha} Expression but Decrease Functional Transcriptional Activity, DNA Binding, and Degradation -- Jones et al. 12 (18): 5384 -- Clinical Cancer Research
thioredoxinのinhibitionが原因なのかに関してのdataがないよ。
TRX inhibitorが何かの現象を起こすとしてもそれがTRXのinhitionによるものかどうかが解らないとあまり大きな意味は無いような気がします。

2006年09月27日

これはすごいよ

Real-Time 2-Photon Imaging of Mitochondrial Function in Perfused Rat Hearts Subjected to Ischemia/Reperfusion -- Matsumoto-Ida et al., 10.1161/CIRCULATIONAHA.106.628834 -- Circulation
supplementのmovieがすごい。
実物を見せてもらうともっと感動する。

げっ、これはまったく気付かなかった

Posttranslational hydroxylation of ankyrin repeats in I{kappa}B proteins by the hypoxia-inducible factor (HIF) asparaginyl hydroxylase, factor inhibiting HIF (FIH) -- Cockman et al., 10.1073/pnas.0606877103 -- Proceedings of the National Academy of Sciences
もう自分が嫌になってしまいます。
自分たちで見つけた分子なのに..

2006年09月28日

ここまで違うか

一つの論文に対するとらえ方がこうも違うのかという好例。
論文はこれ
NEJM -- International Trial of the Edmonton Protocol for Islet Transplantation

コメント1 研究のスポンサーNIH
税金が適切に使われていることをアピールしたい
Clinical Trial Shows Islet Transplantation is a Promising Procedure For
Certain Patients with Severe Type 1 Diabetes, September 27, 2006 News Release
- National Institutes of Health (NIH)

コメント2 New York Times
論文のネガティブな面をことさら強調
理由はわかりません
Diabetes Treatment Fails to Live Up to Promise - New York Times

コメント3 掲載紙のエディトリアル
論文の内容を解説しているだけ
NEJM -- Diabetes Cure -- Is the Glass Half Full?

2006年09月30日

今週の一押し38:"クライマーズ・ハイ"

クライマーズ・ハイ

NHKで再放送を流していましたね。今日は当直なのですが何も無かったので夕ご飯に合わせて見ました。

文庫本になり660円で買えるのだから安いものです。

研修医の先生方の交代

ぼくの職場ではスーパーローテーターの先生方が三ヶ月交替で一斉に入れ替わります。
麻酔・救急のローテーターも明日から15人くらい入れ替え。
今日、オリエンテーションを行いました。手術室は病棟の勤務とかなり違うところがあるので月曜日はいつもながら結構混乱すると思います。
今までの先生方は、内科系の研修が始まります。
一年半後にまた麻酔科に戻ってきてくださいね。

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