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2007年05月 アーカイブ

2007年05月01日

平成19年度科学研究費補助金の配分について

平成19年度科学研究費補助金の配分について(速報値)−文部科学省
出てますね。
機関別の採択件数とか、配分額、種目別の採択率など出ています。
例えば基盤研究など、AでもBでもCでも新規分の採択率は23%となっています。

採択件数一位は言わずもがな東京大学。以下、京都、東北、大阪、九州と続きますが、配分額では大阪大学が3位です。

採択率一位は一橋大学ですがこれは文系(だろう)なので無視。理系の一位は生理学研究所でなんと採択率50.8%。
東京大学は33.5%、京都は33.0%でした。
30位には国循が入っています。

田附興風会も新規、継続あわせて18件。立派です。
冲中記念成人病研究所は5件だからね。

2007年05月03日

Imagination of Pain

朝から丸一日当直です。
やっぱり働きましたというかまだ来るかも知れません。

さて
asahi.com: 脳内メカニズム解明 写真見て「痛い」 群馬大院教授ら - サイエンス
で紹介されていた論文を読んでみました。
Inner Experience of Pain: Imagination of Pain While Viewing Images Showing Painful Events Forms Subjective Pain Representation in Human Brain -- Ogino et al. 17 (5): 1139 -- Cerebral Cortex
写真のセットを被験者に見せて、痛そうと想像してもらいます(Imagination of Pain)。一方別の怖い写真を見せて、恐怖心をあおります(emotion of fear)。これらとrestの状態のの脳の様子をfMRIで観察したことろ、Imagination of Painでは、insulaとかACC(ant. cigulate cortex)が、emotion of fearではamygdaraとACCの活動の亢進が観察され、実際の侵害刺激なしにImagination of Painだけでpain-related neural networkが特異的に活性化するという報告だと思います。

これをInner Experience of Painと言えるかどうかは、議論の余地が大ありだと思います。
ぼくとしてはちょっと違うだろうと思いますが、"Inner Experience of Pain"というのはこの業界での術語になっていてとくに哲学的な用語では無いのかも知れません。素人なので何とも言えません。

これもおもしろいが
Intrinsic functional architecture in the anaesthetized monkey brain: Abstract : Nature
これはもっと意味深長で良いと思います。

まだまだ危ないBaltimore

Baltimore Mayor Unveils Strategy to Attack Increase in Gun Crime - New York Times
まだまだBaltimoreは危ない街のようです。
今日までで今年に入ってすでに93人が犠牲に。
ぼくが滞在していたは、毎日Baltimore Sunという地元紙に犠牲者の数がまるで交通時の数の表示のごとく出てました。その頃に較べたら少しはましになったような気もしますが.,


2007年05月04日

一本道に見えて実は茨の道かも

A Common Allele on Chromosome 9 Associated with Coronary Heart Disease -- McPherson et al., 10.1126/science.1142447 -- Science

A Common Variant on Chromosome 9p21 Affects the Risk of Myocardial Infarction -- Helgadottir et al., 10.1126/science.1142842 -- Science

どんどんこういった事が明らかになっていくと思います。
道は一本道
創造的な仕事とはとうてい言えないが、患者を集める必要もあり実際は結構大変そう。
根気とお金のある人がやるのだろうな。
そうなるとicelandをあげてやっているdeCODE Genetics Inc.とかがぜん”有利”ですよね。

2007年05月08日

今週の一押し2007-#18:"Better: A Surgeon's Notes on Performance"

Better: A Surgeon's Notes on Performance

Atul Gawande(参照)の新作です。
前作に引き続き医学医療は発展途上のいまだに不完全な科学であるという立場から医学をめぐる様々なトピックスを随筆風に語ったものです。
雑誌New Yorkerに最近発表されたモノを読むことができますのでこれらを読んでのち本の購入を考えたら良いと思います。
Complications: A Surgeon's Notes on an Imperfect Science

Annals of Medicine: The Way We Age Now: Reporting
Annals of Medicine: The Score: The New Yorker

医学部の学生や研修医の先生に読んでもらうのは適していると思います。
何人か参加してくれたら読書会をひらいてもいいのですが、みんな忙しいか。

邦訳は出版されていませんが、英語は平易で辞書なしでも読むことができると思います。

いわゆる入局説明会の案内

恒例の、職場(京大病院麻酔科)の修練医(後期研修医)の先生方のための説明会が開かれます。毎年少しずつ前倒しになっています。

まず5/20これは初期研修医の募集のための説明会(参照)ですが、麻酔科もブースを出します。現研修医の先生で説明を聞きたいという方がいらしたら連絡下さい。

修練医の先生方向けの説明会は7/8と8/26(参照)に開かれます。麻酔科もこれらに合わせて個別説明会を行います。

なお京大麻酔科のHPはここからどうぞ。
大学院生の募集もやっています。

2007年05月09日

脳出血の治療指針

Guidelines for the Management of Spontaneous Intracerebral Hemorrhage in Adults. 2007 Update. A Guideline From the American Heart Association, American Stroke Association Stroke Council, High Blood Pressure Research Council, and the Quality of Care and Outcomes in Research Interdisciplinary Working Group -- Broderick et al., 10.1161/STROKEAHA.107.183689 -- Stroke
一度は目を通しておいた方がいいかも

"Doctors Reap Millions for Anemia Drugs"

Doctors Reap Millions for Anemia Drugs - New York Times
erythropoietin製剤の販売促進のために、AmgenとJohnson & Johnsonが医師に多顎のお金を提供していたという話です。
米国では一人の透析患者へのEPOの投与量が日本の5倍程度となっているのだそうです。世界一です。

dual monitor

研究室のcomputerをdual monitorにしました。
確かに見やすい、はかどる

dual-monitor.jpg

うかうかしていたらもうこんな時間です。
あすは”重要な”麻酔があるのでもう帰って寝よう

2007年05月10日

これってすごいことだよね

神経:学習および記憶の回復はクロマチンの再編成と関連する : Abstract : Nature
ありそうな話ですが、ホントにあると言うことになるとすごいとしか言いようがありません。

2007年05月11日

今いる人にも愛の手を..

asahi.com:臨床医指向で細る研究医 京大が養成特別コース設置へ - 関西


そのため「このままでは、研究に進む医学部出身者がいなくなってしまう。今日の臨床医育成を強調するあまり、明日の医学を支える研究医を忘れている」(成宮研究科長)と、研究医育成コースが計画された。


 成宮研究科長は「近年、医学はどんどん科学的な事実に基づいた厳密な学問になっている。将来の基礎医学研究者だけでなく、科学的思考のできる臨床医を育てるためにも、早くから鍛えることが必要だ。京大や東大にはその義務がある」と話している。

といわれても..

とにかく時間下さい。
最近では6時に起きて研究室に出て、手術室で麻酔をして、終わった後23時くらいまでは研究室にいますが、それでも時間が足りないんですよ。
これからの人に期待するのも良いがすでにいる人を支援する方が効率はいいのでは

研究だけという生活もそれなりによかったなと最近思っています。数年前某研究所にいたときは、研究費は潤沢だったし、当直無しで結局収入も今とたいして変わらなかったしなー。なんで辞めちゃったんだろう..

腫瘍塞栓で腫瘍は低酸素になるのか?

Effect of Transcatheter Arterial Embolization on Levels of Hypoxia-inducible Factor-1{alpha} in Rabbit VX2 Liver Tumors -- Rhee et al. 18 (5): 639 -- Journal of Vascular and Interventional Radiology

TAE(transcatheter arterial embolization; 肝動脈塞栓療法)は肝臓がんに対して、腫瘍を栄養している肝動脈に油性造影剤(リピオドール)と抗癌剤、塞栓物質(ゼルフォーム)を混和したものを注入し、栄養動脈を閉塞することにより、選択的に肝細胞癌を壊死に導く治療法ですが、腫瘍は低栄養と共に低酸素状態に陥ると考えられます。
だったらHIF-1が活性化してもいいのではないかと考えて調べると果たしてそうだったという話です。

結構単純な話だと思いますが、なんか良い話だと思いました。

2007年05月12日

「受胎告知」

キリスト教に「受胎告知」という重要なエピソードがあって名だたる画家がテーマとして取り上げてきました。今、日本にレオナルドダビンチの手になる「受胎告知」が来ていて公開されています。
特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像」

davinci_annunciazione.jpg


少し前に、NHKのテレビ番組「新日曜美術館」でこの展覧会が取り上げられているのをみました。雑誌「ブルータス」はすでに特集として取り上げていて雑誌「芸術新潮」も今度取り上げるようです。
レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知
もこの時期に合わせて出版されていて1050円という戦略的な値段で売っているのでこれを読んでもおもしろいわけです。

医学は科学と芸術かという議論があります。
医学はこの絵の様なものだと思っています。科学と芸術の融合されたもの。
というような与太話を「枕」に使って研修医の先生向けのセミナーをしました。

外科手術の支援システムがあってda Vinciと云う名前が付けられています(参照)。

2007年05月13日

ハイリスク研究って何だ

asahi.com: 「失敗恐れないで」ハイリスク研究に補助金 文科省検討 - サイエンス
ひとには話していないのですが、アイデアは持っています
ほっほっほ..

2007年05月14日

FG-2216の治験患者が劇症肝炎を発症

FG-2216はHIF-1のalpha subunitのstabilizerでその作用によりEPOの増産を通じて貧血の経口治療薬として現在phaseII trialに入っている薬剤です。
アステラス製薬はFibrogenとこの薬剤の貧血治療に関しての独占契約を結んでいてFG-2216にはYM311というコードがつけられています。
このYM311の治験中の患者が劇症肝炎を発症したというnewsです。
Drug company says patient dies in anemia drug trial: Scientific American
YM311が原因物質であるかどうかは現在不明です。
たぶん違うでしょうね。

FibrogenはこのほかにFG-4592、FG-4539という経口 HIF prolyl hydroxylase阻害薬を臨床に持って行く研究を行っています。

a COMMON OXYGEN SENSOR !?

RAT CAROTID BODY CHEMOSENSORY DISCHARGE AND GLOMUS CELL HIF-1{alpha} EXPRESSION IN VITRO: REGULATION BY A COMMON OXYGEN SENSOR -- Roy et al., 10.1152/ajpregu.00882.2006 -- AJP - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
一読しただけでは言っていることが理解できませんでした。

2007年05月15日

あっ出てる

東京新聞:心臓血管外科が手術再開 京大病院、4カ月半ぶり:社会(TOKYO Web)

出てる。

「学会出席」

医学界新聞という新聞が週刊で医学書院から出ています。なぜか毎週送ってくるのですが、今進行中の連載に、「臨床医学航海術」があります。済生会福岡総合病院の田中和豊先生が担当しておられます。今週で連載16回目で、毎回研修医に読んで聞かせたくなるような立派な話なのですが、今回は少し今までとは毛色が違うかなと云った内容になっています。
医学書院/医学界新聞【〔連載〕臨床医学航海術(16)(田中和豊)】(第2731号 2007年5月14日)

カンファレンスと学会の二つの小見出しで少し皮肉の効いた物になっています。
とくに学会の方は

学会に行ってリフレッシュして帰ってくる人に比べて,留守番組は3日3晩の当直を強いられ疲労困憊である。髪はぼうぼう,顔は疲れ果て,体は汗だらけで体臭がくさい。学会から帰ってきた人からの最新の医学知識というみやげもないし,みやげ話ときたら「誰々と会って一緒に飲んで楽しかった」ということくらいである。それだけ楽しい思いをして,学会開催地のおみやげを持って帰る程度のことで許してもらえると思っているのであろうか? 留守番組の白い眼を見ろ! 学会に行ってばかりいる特権階級の人々は,その間の診療体制が不十分になり,患者さんに行き届いた診療が行われなかったり,研修医への監督や指導が行き届かなくなったりすることをまったく気にかけないらしい。

こんな内容で、なかなか意味深長です。
自分の置かれた立場で受け取り方は様々でしょうね..
今度の麻酔科学会は6月の北海道ですよね。
ぼくは留守番です..

2007年05月17日

論文数の年次変化

HIF-paper-number_graph.jpg

必要があって調べてみた結果です。
pubmedでHIF-1のkeywordを持つ論文数の年ごとの推移です。
”指数関数”的に増えていることがわかります。

必要があって調べてみた結果です。

pubmedで"HIF-1"のkeywordを持つ論文数の年ごとの推移です。
(正確には1991年と1992年は”hypoxia-inducible"という語を持つ論文数です)

”指数関数”的に増えていることがわかります。

2007年05月18日

"ミラー麻酔科学"

Miller's Anesthesia: Text With Continually Updated Online Reference

の日本語訳が出版されたそうです。

ミラー麻酔科学

必要もないのでまだ”読んで”いないのですが、多分どちらを選んでも大きな違いは無いだろうし値段の差も誤差範囲ということで英語版を辞書を使って読むくらいなら翻訳版を読んだ方がいいような気もします。
とにかく読むことが重要で、麻酔を生業としているのならやはり一回くらいは通読するのが良いと思います。
通読したからといって麻酔がうまくなることはないのですが、だからといって読まなくて済まされるわけでもないと思いますのでやっぱり買って読めということになるのでしょうか。

といってもこの内容なら、各雑誌に不定期に掲載されるreviewを5年分くらい集めて読んでも大した変わりはないと思いますが集めたりする暇が無いかも知れません。

原書は"Miller's Anesthesia"なのだから訳は"ミラー麻酔"となるべきのような気もしますが.. 気にしないきにしない。
因みにぼくらの教室は
Department of Anesthesia, XX University Hospitalと表記する約束に昔からなっています。
ぼくは好きですね。Department of Anesthesioloyとか呼ばれるより上等だと思っています。

ただこんなのが出版されたら確実に
臨床麻酔学全書
は売れなくなるな。

Harrison's Principles of Internal Medicine (HARRISON'S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE) (Single Volume)

ハリソン内科学 第2版 (原著第16版)

の関係ではまだまだ英語版のアドバンテージはあります。
値段が安い!!
この程度の値段なら買って手元に置こうという気もします。

お前は読んだのかと思う人がいると思います。

研修医の時代に旧い版を読みました。
一昨年、昨年と学生の授業のために1/3程度を読みました。読んでいない部分はなので結構あります。
すみません。

2007年05月22日

今週の一押し2007-#19:"新しい薬をどう創るか"

新しい薬をどう創るか―創薬研究の最前線

京都大学の薬学の先生方による講談社ブルーバックスです。
創薬について薬学の先生方がいろんな角度から説明しているわけです。
少なくともぼくにはまったく知らないことが書いてあるわけではないのですが、一読してみれば知らなかったことも当たり前にたくさん書かれていますしタメになります。

ちなみに鎮痛薬のこのことにも触れられていますがまったく意味のあることは書かれていませんでした。とにかく薬学の先生全員に割り振ったのではないかと云うくらい広い範囲をカバーしていると思いますがそれだけにどうでもいいようなことも書かれています。
玉石混淆。

10日ほど前に紀伊國屋で見かけたのですが、帯には
「新薬は、何万人もの医師に匹敵する!」
とありました。
ぼくらに恨みでもあるのでしょうか...

それは冗談としてもアトルバスタチンなど売り上げなんと130億ドル-一兆円超えています-
トヨタ自動車があれだけ売りまくって連結売り上げ21兆円だそうですから当たる薬のすごさがわかります。因みに任天堂は一兆円くらいの売り上げです。
製薬会社の研究者がなぜ高給を取っているのかわかるような気がします。
ぼくらとは商いのケタが違うのですよ。

薬学研究科から10年に一つこれクラスの薬ができたら京大も安泰のような。
がんばってください。

すごいなやっぱりアトルバスタチン

2007年05月29日

早起き→学校が楽しい?

asahi.com:「早起きの子どもは学校が好きで楽しい」 3都県調査 - 暮らし
早起き→学校が楽しい!
学校が楽しい→早起き!
どっちもありか

早起き→病院が楽しい?
病院が楽しい→早起き?
どっちもない!...?

2007年05月30日

学会ゴロ

柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida : シンポジウム、学会の存在の効用、家具の衝動買い
から
相変わらず柳田先生痛烈です。

学会の存在の効用は、このような年会だけやってるのが、一番無難だと思います。学会ゴロを作らないこと、これが一番大切です。
学会ゴロという言葉を知らない若い人のために説明しますと、学会ごろつきの略称です。

〜中略〜

つまり、学会の権威とか結束力とかそういう類のものは言葉が汚くてすみませんが、「くそくらえ」という気持でした。研究者ひとりひとりが強ければいいはずです。

あまり学問的な雰囲気もなく、ランチョンセミナーとイブニングセミナーの間に機会展示があってその”おまけ”に発表があるような学会も確かにありますね。何の学会とはあえて云いませんけど。

目が疲れました。帰って寝ます。

2007年05月31日

Nick Laneの"Oxygen"の翻訳が出ていた

Oxygen: The Molecule That Made the World (Popular Science)

の翻訳が出版されていたことに今日気づきました。
名著だと思います。
酸素に関するいろんな蘊蓄、生物学的な意義などが満載です。

翻訳は
生と死の自然史―進化を統べる酸素
値段もまあまあです。
これは翻訳の方が取っつきやすいと思います。原著は読むのが少し難しい。

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