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2007年06月 アーカイブ

2007年06月02日

良いポスター発表のためには..

PLoS Computational Biology - Ten Simple Rules for a Good Poster Presentation
という論文-とはいわんか。essayみたいなもの-が出ています。

良いポスター発表のための10の簡単な法則
ですね。

Rule 1: Define the Purpose
Rule 2: Sell Your Work in Ten Seconds
Rule 3: The Title Is Important
Rule 4: Poster Acceptance Means Nothing
ポスターを出しただけでは不十分であり、学会で認められるためには科学的に立派な発表をして皆に認めてもらう必要がある
Rule 5: Many of the Rules for Writing a Good Paper Apply to Posters, Too
Rule 6: Good Posters Have Unique Features Not Pertinent to Papers
Rule 7: Layout and Format Are Critical
Rule 8: Content Is Important, but Keep It Concise
Rule 9: Posters Should Have Your Personality
ポスター発表は論文と違い分量も少ないのでその分を考慮して対策を講じる必要がある。
ポスターのうち記録に残るのはタイトルと要約くらいなものだが、だからこそ仮説などを通常の論文以上に主張することができるのでこれの特徴を利用しない手はない。
Rule 10: The Impact of a Poster Happens Both During and After the Poster Session

もう学会も終わっちゃったのですが、少なくとも時間内はポスターの前で皆と議論をしようという姿勢を皆が持つことが大切だと思います。
学会も、大きなホールでやるような一種興行みたいなものは、ブロードバンド中継でやってというよりスタジオ撮りで流して、ポスターとか一般の演題とかそういったものにチカラを苛鱈どうかと思いますが、既得権益を崩すのはむずかしいのか..

2007年06月03日

今週の一押し2007-#20:"データはウソをつく―科学的な社会調査の方法"

データはウソをつく―科学的な社会調査の方法

ちくまプリマ新書の一冊で読者としては一次的には高校生から大学生が想定されていると思いますが、大学院生が読んでも臨床医が読んでもとてもタメになる本です。
一口に言えば、統計でだまされない、ウソをつかないタメの基本的な心得を授けるのが目的の新書ですが、第一章の事実認定における社会科学と自然科学の違いとか第二章の「相関と因果」などは、初学者にもわかりやすい説明がされています。

とてもためになるのは第三章「実際にデータを解析してみよう」です。
カフェインの摂りすぎは心臓に悪いのか?という問いをデータを用い実際に解析してみるという試みが行われています。
リサーチリテラシーを身につけて統計で騙されないように、また知らず知らずのうちに誤った事実認定をしないようにというメッセージが込められているのですが、それよりも集めた統計的なデータを用いて実際に解析を行うことがいかに大変な大仕事であるかということがよく解ります。

高級な統計解析の教科書を読む前にこの定価760円の新書をまず読むことをお勧めします。

2007年06月09日

論文校正、翻訳サービスとmail翻訳サービス

e-mailを英語で書いて送らなくてはいけない場合で、”ヘタな英文”では具合の悪い場合に利用できるサービスのようです。

[メール翻訳 訳めーる] - 笑われない外国語メールを送るなら 訳メール

日本語から英語への翻訳で12円/一文字ということは、一通1800円くらいになるのだと試算されています。

どのくらいきれいな英語になるのか

が利用のカギだとは思いますが、高いなと言う印象はあります。

こういったサービス以外にも論文の英語校正とか、日本語で書いた論文をまるまる英語に翻訳してくれるサービスなど多数あります。
googleで論文構成とかで探しても無数と云っていいほどたくさん見つかります。
日本語を英語にする場合400字で7000円前後のようです。

自分の論文を投稿する場合”正しい”英語なら少々へたでもお愛嬌ともとってもらえますが困るのは査読の場合です。英語が下手だとすぐに日本人だとばれてしまいます。これは避けたいなとはいつも思います。

2007年06月11日

Acute Wiiitis

Wii-itis

くわしくはここを読む

2007年06月12日

"臨床サイトカイン学"

臨床サイトカイン学


LiSAに連載されていた小論文などが一冊にまとめられています。

詳しくはこちら

"周術期の呼吸管理”

周術期の呼吸管理
出てます。

くわしくはこちら


これからは”鉄”だ!!

Regulation of iron homeostasis by the hypoxia-inducible transcription factors (HIFs) -- Peyssonnaux et al., 10.1172/JCI31370 -- Journal of Clinical Investigation
すこしくやしい。

でも、もう少ししたらきっと鉄の時代が来ると思います。
これからは鉄です。いまから予言しておきます。


Bill GatesがHarvard大学の卒業式で式辞を

Remarks of Bill Gates — The Harvard University Gazette

読んでみましたが、嫌味な式辞です。

2007年06月13日

術前のヘマトクリット値の異常と手術死の関係

JAMA -- Abstract: Preoperative Hematocrit Levels and Postoperative Outcomes in Older Patients Undergoing Noncardiac Surgery, June 13, 2007, Wu et al. 297 (22): 2481

術前のヘマトクリット値の異常が手術後30日以内の患者の死亡のリスク因子であるという報告。

くわしくはこちら

2007年06月15日

カルシウム調節の新展開

{alpha}-Klotho as a Regulator of Calcium Homeostasis -- Imura et al. 316 (5831): 1615 -- Science
ついに出ましたね。
それにしてもall star castで臨んだ論文だな。

おお、新聞にも出てるぞ
体内カルシウム:濃度調節のたんぱく質解明 京大チーム−科学:MSN毎日インタラクティブ

2007年06月18日

今週の一押し2007-#21:"生物と無生物のあいだ"

生物と無生物のあいだ


を読んでみました。
書評ではかなり好意的に紹介されています。ぼくの目にした書評は、いわゆる文系か非生物系の理系の評者によるものでした。
例えばこの本の帯には


福岡伸一さんほど生物のことを熟知し、文章がうまい人は希有である。サイエンスと私的な完成の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す。
茂木健一郎
超微細な次元における生命のふるまいは、恐ろしいほどに、美しいほどに私たちの日々のふるまいに似ている。
内田樹

とあります。当たっていると思いますが、まったくこの本の学術的内容を反映していません。この業界の内情を知らない人がこの本を読むとこういった感想を持つのかも知れません。
普通の医者や生物学者がこの本を読んでこんな感想を持つことは無いと思います。

第8章から第11章はこの本の中核でそれ以外の章は、著者の経験に基づく“サイエンスと私的な完成の幸福な結びつき“が語られていきます。分子生物学の成立の時代背景なども盛り込まれていて読んでいて興味を引かれます。といっても普通にやっている分子生物学者が知らないようなレアなエピソードが語られているわけではありません。しかし語り口がよくとても良くできた物語を読んでいるような気になります。
この本の生物学的な内容は、生物とは動的平衡にある流れであるという主張です。福岡先生が発見したことではありません。これまた普通の生物学者なら最低一度は目にしたことがあるような学説です。福岡先生自身もいろんな場所でこの学説の紹介をしておられます。

しかし、740円以上の価値はありますし、いままで、動的平衡論について知らなかった人は、これを機会にこの考えを学ぶ良い機会です。わかりやすいです。読み物としてもたのしい。小ネタも仕入れることができると、お得な740円です。

生物学者が書いた新書のこの種の読み物では他に
がん遺伝子の発見―がん解明の同時代史
考える血管―細胞の相互作用から見た新しい血管像

などあります。
とくに児玉先生の本は、おもしろいですよ。

2007年06月21日

科学研究費補助金データベースが更新されていました

科学研究費補助金データベース
に平成19年度採択課題が収録されて更新されていました。

麻酔科の分野に限らないのですが、どんな研究課題に研究費が出ているのかを調べることができます。

一般的なのデータベースですので一件で億単位のようなbig projectなどはここには載っていません。

"ことえり"

ぼくはかなり影響され易い人間です。

今までmacで日本語変換にはATOKをもっぱら使ってきたのですが、”shiology”を読んでふと’ことえり’を使ってみようと思いたち,使ってみたらなんかこっちの方が使い易くなり先週から乗り換えました。
いろんな便利な辞書もあってかなり快適になりました。

ATOKを使っていたときには何かの拍子で変換の速度がふっと落ちてしまうような感じがすることが有ったのですが’ことえり’に変えてからはそれがなくなったような気がします。

2007年06月23日

長男はI.Q.が高い!?

さてさっきScienceを読んでいたら面白い論文にぶつかりました。

Explaining the Relation Between Birth Order and Intelligence -- Kristensen and Bjerkedal 316 (5832): 1717 -- Science

PSYCHOLOGY: Birth Order and Intelligence -- Sulloway 316 (5832): 1711 -- Science

ついつい全部読んでしまいました。
ようするに兄弟で較べると第一子が一番I.Q.が高いというような調査結果があるそうなのですが、その理由をああでも無いこうでもないと論じている訳です。
はじめの論文は、理由を生物学的というより家族内力学において説明できると主張しています。ーほんとはこれだけでなくもっと驚くデータが示されているのですが、眠いのでこれ以上書く訳にはいきません。自分で読んでくださいー

へーっと思ってNew York Timesを読んでいるとこんな記事を見つけました。

Research Finds Firstborns Gain the Higher I.Q. - New York Times

この論文の紹介記事です。

最後の方に


Firstborns have won more Nobel Prizes in science than younger siblings, but often by advancing current understanding, rather than overturning it.

とあります。

世の中で第一子の数が一番多いのだから,そこらへんはどうなっているのだというツッコミは措いておくとして、なかなかうまいまとめ方だと思います。

次男は独創性に富む!?

2007年06月30日

今週の一押し:2007-#22:"若き数学者への手紙"

若き数学者への手紙

原題は”Letters to a Young Mathematician (Art of Mentoring)”


ある数学者が、数学に興味を持った姪?の「メグ」にあてて書いた21通の手紙。イアン・スチュアートによるフィクションです。
メグが高校生、大学生、院生、ポスドク、助教授を経て数学者としての階段を上っていくメグにその時々に応じたアドバイスをしていくという内容になっています。
数学とはどんな学問なのか,学問の広がりを歴史的に解説したりが主体の手紙もあれば,数学とはあまり関連は無いが却って理解の学問に共通な研究者としてプロモートされていくプロセスや他の研究者との付き合いかたなどを指南する内容の書簡もあります。
語り口がすばらしく、どんどん読み進めることができます。


目次を列挙すると
まえがき

1通め なぜ数学をするのか
2通め わたしが弁護士になりそうになった顛末
3通め 数学は幅が広い
4通め すっかりできあがってしまっているのでは?
5通め 数学に囲まれて
6通め 数学者はどのように考えるか
7通め どうやって数学を学ぶか
8通め 証明の恐怖
9通め すべてコンピュータで解けるのでは?
10通め 数学における物語
11通め いくつかの問題を同時にあれこれいじる
12通め 超大作
13通め 解けない問題
14通め キャリアの梯子
15通め 純粋か応用か?
16通め どこからあんな突拍子もないアイデアがわくのか?
17通め 数学の教え方
18通め 数学者の世界について
19通め まぬけなことをしでかさないために
20通め 協力の喜びと危険と
21通め 神は数学者か
となります。

11通め いくつかの問題を同時にあれこれいじる
では
研究テーマの選び方について語られます。数学の世界でポアンカレ予想を解いたら一気に名声を博すだろうが、普通に考えて大学院生が取り組む問題ではないし、あまりの高い峰を攻めるあまり3年も4年も作業を続けても征服できない場合もある。


だから分別のある、妥協点として、大きな問題に取り組む時間は、使える時間の一部だけにしておいて、残りの時間で、それほど大きくはないが解くことができ価値もある問題に取り組むというのがいいと思う。

これは,生物学研究でも同じ。時間もお金も有限です。

14通め キャリアの梯子
では,学者として育っていく過程での指導教官や周りとの距離の取り方についてが語られる。
DXGS;doctor X's graduate student
PYR: promising young scientist
ER:excellent researcher
SS;senior scientist
GOP; grand old person
EG; emeritus guru
MG; ,marvelick guru
のような分類があるという。

16通め どこからあんな突拍子もないアイデアがわくのか?
では,研究における才能の問題が語られる


研究に必要なのは、同窓生にトンダヅの宇土、考える時間と、仕事ができる場所と、優れた図書館へのアクセスと、優れたコンピュータシステムへのアクセスと,コピー機と、高速インターネット接続。ただし,最初の一つだけは自前だ。

独創性は、持っているか、持っていないかのいずれかで、教え込めるものではない。独創性を育んだり、圧殺したりすることはできるが、「独創性に関する基礎講座」みたいなものが有って、その口座に出て、教科書を読み、試験に受かれば新しいアイデアを生み出せるようになる,というものではない。

なかなか耳の痛い話で。才能が無い者はそもそも学者をになるべきでなく、またそのような選別は大学院入学の時点でおこなうべきなのでしょう。

こんな感じで、理系の人ならどの分野の人が読んでもとってもためになる本です。

考えました、ぼくも

内田先生のブログを読んで考えました

考えたこと at bodyhacking::blog

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