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anesthesia & critical care medicine アーカイブ

2006年07月04日

何で?

山形大医学部研究チーム、学会誌論文でデータねつ造 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

いろんな意味で面妖な報道です。
皆さんもいろんな疑問を抱くと思います。
たとえば
-なぜ”麻酔”の論文がこのようなnewsになるのか
-なぜ今ごろ唐突にこのような報道がなされるのか
-誰が得をして誰が損をするのか

それはさて置き、このような誰も引用しないような論文ほど捏造の温床となっているのかも知れません。多くの人の目に触れる論文は追試をする人もいるだろうし、その結果、おのずと真偽が明らかになっていきます。多くの研究者をその領域の研究に呼び込むことにより、その報告自体が誤りを含んでいても弁証法的な発展を遂げる場合もあります。一方、”麻酔”のような雑誌に日本語で掲載された論文は人目に触れることも少なく、追試を試みる研究者も少ないでしょう。このような論文で不正な操作が行われていても発覚することは少ないと思います。規模の小さい臨床研究など、一種の一例報告とも言えます。

ともかくこのような報道がなされた以上、学会も何らかの調査を始めるのでしょうか。
麻酔科学会は先の学会で、論文の捏造を認めた研究者を招待講演者として招聘ししゃべらせたという過去をもちます。今回、学会として何もしなければ日本麻酔科学会は研究上の不正行為に寛容な学会ということになってしまいます。

しかし何で麻酔に投稿するような論文で捏造などするのでしょうか。
学位などが関わっているのでしょうか。そうだとしたらそれはそれで悲劇的な話です。

2006年07月06日

専門修練医(後期研修)選択のためのポスターセッション@京大病院

専門修練医(後期研修)選択のためのポスターセッション
明日こんなものが催されます。
京大病院の麻酔科で働きたい先生方は参加してください。
ぼくもでます。
ビデオ撮影、デジカメ撮影、記念撮影大歓迎です。

2006年07月13日

医者が増えても解決しない問題

日本経済新聞では日曜の特集Sunday NIKKEI a(alpha)で”医師不足の深層”と題する特集を連載しています。
今週の日曜は医学部の学生募集の”地域枠”を取り上げていました。

以下のような報道と連動しているのでしょうね。
医師不足で国立大3校医学部が県内者推薦の「地域枠」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

北海道、東北地区を中心に軒並み地域枠が導入されています。札幌医科大学は1997年に導入されて以来2006年度では20人の枠が設定されています。詳しい内容はぼくは把握していませんが、地元からの入学者を試験で優遇するというもののようです。これとどういった関係にあるのか分かりませんが、奨学金を貸与し一定期間の地域勤務で貸与金の返済を免除するという制度もあるそうです。
日経の解説ではそのような方策は医師の地域への定着に一定の成果を挙げているとのことです。

この特集では、院内助産所の取り組みやなども紹介されていました。妊娠24 週の時点で医師による診察の結果、リスクが少ない場合、同じ病院内で医師によるお産か、助産婦によるお産かを妊婦が選択できる制度を採用している病院が有るそうです。妊婦にとって助産婦によるお産を選択するインセンティブがどこにあるのかぼくにはよく分かりませんので、何とも云いようがありませんが、制度の概念はよく理解できます。
麻酔看護師制度の導入を考えている人たちの理論的な背景にもこのようなことがあるのでしょうか。リスクの小さい患者さんの小さな手術の麻酔は必ずしも医師がすべて担当する必要がないという考えかたです。しかし患者にとって医師による麻酔でなく看護師による麻酔を選択するインセンティブがどこにあるのかという点は残ります。研修指定病院において研修医による麻酔を拒否する患者さんがいます。そのような人たちを麻酔看護師による麻酔を受けるように誘導することはそんなに簡単なことではないと思います。

最後に東大病院の院長永井氏のコメントが紹介されていました。


日本の病院は、海外に比べ医師を支える看護師などの人数が少ない。医師が医師以外でもできる業務に追われ結果として医師不足になっている

おっしゃるとおりですね。

しかし大学病院(すくなくとも国立大学法人系の病院)で働く医師をとりまく環境は看護師が少しくらい業務を分担してくれたからといって改善されないと思います。
現在私たちの病院では、研修医のローテートは16人/3ヶ月と十分すぎるほどです。一日に一回も麻酔が当たらない研修医もいます。彼らが何人いてくれてもぼくたちは一向に楽になりません。
今年からは後期研修の先生方も加わってくれました。おかげで少し楽になりました。
しかし当直の回数とか日々手術室から研究室に移れる時間などを含んだ環境はまったく改善しません。教員の定員の問題や給与の問題が未解決なままだからです。月曜日から金曜日朝から深夜まで診療にたずさわっても、給与は文学部の先生方とほぼ同じ。
こういった状態は都市部の市中病院においても専門医レベルの麻酔科医にとっては共通の問題であろうかと思います。
少なくともぼくをめぐる状況は、新研修制度の導入前からのことで、この数年で急に悪化したわけではありません。では何が悪いのでしょうか。答えは自分ではわかっていてどうすれば逃れらるかもわかっているような気もしますが...

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2006年07月18日

レントゲンを撮らなくても残留ガーゼの有無がわかるシステム

Arch Surg -- Abstract: Initial Clinical Evaluation of a Handheld Device for Detecting Retained Surgical Gauze Sponges Using Radiofrequency Identification Technology, July 2006, Macario et al. 141 (7): 659
いつも考えていたことが現実になりました。
ガーゼに鉛の代わりにradiofrequency identification (RFID) chipを仕込んでおくと体外からでもhandheld deviceで信号を検出することによりガーゼの残留の有無がわかるというシステム。
値段は高そうですが、便利は便利。

2006年07月20日

"Tracking the recovery of consciousness from coma"

Tracking the recovery of consciousness from coma -- Laureys et al. 116 (7): 1823 -- Journal of Clinical Investigation
植物状態または”最小意識状態”(minimally conscious state)から患者さんが回復して意識を取り戻す可能性を正確に知ることができたら臨床の現場では非常に役に立つでしょう。

この論文は、著者らは、そのようなことがMRIやPETを用いた検査結果を解析することにより可能になるかもしれないという主張をしています。
交通事故による脳損傷(diffuse axonal injury)により昏睡状態に陥り19年後に意識を取り戻した患者と、MCS状態から結果として回復しなかった患者、また健常者の主としてMRIによる画像を解析することにより脳の解剖学的、機能的な再生の兆候をとらえることによりMCSからの回復の可能性を予言できるのではないかと推論しています。
面白いです。
JCIの論文はどなたにでも読むことができます。

2006年07月24日

こんなの出てます

Extracellular Signal-Regulated Kinases Trigger Isoflurane Preconditioning Concomitant with Upregulation of Hypoxia-Inducible Factor-1{alpha} and Vascular Endothelial Growth Factor Expression in Rats -- Wang et al. 103 (2): 281 -- Anesthesia

こんなの出てます。data がpoorできちんと批判できませんけどぼくらは以前に
こんなのとか
Reversible inhibition of hypoxia-inducible factor 1 activation by exposure of hypoxic cells to the volatile anesthetic halothane.
こんなの
The volatile anesthetics halothane and isoflurane differentially modulate proinflammatory cytokine-induced p38 mitogen-activated protein kinase activation.

も出しています。

2006年07月25日

京都大学病院麻酔科入局説明会は9/3

京都大学附属病院麻酔科の入局説明会の第一段は2006年9月3日の日曜日に行います。

当日は京大病院の専門修練医の説明会が病院の第一臨床講堂で病院主催で開かれます。
その説明会の後に麻酔科独自の説明会を開きます。
麻酔科のスタッフ、現在研修を行っている修練医の先生方にも参加していただく予定です。
追って詳しい予定をお伝えしていきます。
京大への入局をお考えの先生方にはぜひ参加していただきたいと思います。

病院主催の説明会に関しては
医科専門修練医募集 - 京大病院総合臨床教育・研修センターで詳細を確認していただけます。

2006年07月30日

これで社説か

MSN-Mainichi INTERACTIVE 社説:生体肝移植 ドナー保護の仕組み作りを
ドナーは現在でも十分保護されていると思います。社説として意見を表明するからには現実をよく見据えてからにした方がよいと思います。

2006年08月01日

30周年:レジオネラ症

通称、在郷軍人病、レジオネラ症は30年前の夏、米国フラデルフィア氏でのoutbreakeをきっかけに概念が確立した疾患です。
皆さんには不要と思いますがwikipediaでレジオネラ菌について簡単な解説を読むことができます。
レジオネラ - Wikipedia

New York Timesではこの30周年を記念してか結構気合いの入った記事を掲載しています。
In Philadelphia 30 Years Ago, an Eruption of Illness and Fear - New York Times
当時のNYTの記事もpdf fileで読むことができる構成になっています。
当時NYTに在籍しフィラデルフィアで発生した集団肺炎の記事を書いていた記者が当時をふりかえる形式でつづった文章になっています。肺炎の原因が現在では、Legionella pneumophilaと呼ばれる細菌感染であることが判明するまでに半年程度かかったそうです。当時の学問的な水準から考えたら時間的にはかなり迅速な解明と言えると思います。
なかなか読みごたえのある文章です。多分そのうちにfreeでは読むことができなくなりますので今のうちにアクセスしておくことをお勧めします。

2006年08月08日

"The Influence of Injection Rate on the Hypnotic Effect of Propofol during Anesthesia: A Randomized Trial"

PLoS Biologyというopen accessを売り物にしてどんどんよい論文が出ている雑誌があります。
その雑誌の姉妹誌-兄妹誌?-にPLoS Clinical Trialsというのがあって、まさにさまざまなclinical tiralが掲載されている雑誌なのですが、今日麻酔科関連の論文を見つけました。
PLoS Clinical Trials : A Peer-reviewed, Open-access Journal - The Influence of Injection Rate on the Hypnotic Effect of Propofol during Anesthesia: A Randomized Trial

この論文の内容がどうということを言いたいわけでなく雑誌のプラットフォームについて紹介します。

上記のページをごらんいただくと解りますが、まず詳細なprotocolを入手することができます-protocolやinformed concent用の文章はドイツ語です-。またこの論文に対するコメントをweb上で投稿してまた投稿されたコメントを閲覧することもできます。これはBritish J Medicineなどで採用されている方法です。BMJの前編集長はPLoSを立ち上げたメンバーのひとりだということも影響しているのかもしれません。
editorialは簡潔でありこの雑誌で統一された形式に準拠しておりそれゆえ分かりやすい。PLoSのstaffが執筆しているそうです。このような優秀なstaffを使えるということもたいしたことだと思います。

またこの論文へのアクセスはopenなので、誰でもInternetの環境さえ持っていれば論文を事とができます. 別にASAの会員になるかばか高い購読料を払わないと読めないというわけではありません。

このままいくと既存の雑誌の実際的な存在意義-ある程度はXX-ologyとかいう雑誌の権威は残っていくと思います--などはどんどん薄れていくかもしれません。それでもxx-ologyに投稿するというのはよっぽど頭の固い人のすることだということになっていくかもしれません。

この雑誌に姉妹雑誌にPLoS Medicineというのがあり
PLoS Medicine: Why Most Published Research Findings Are False
という文章が掲載されています。まあなかりぎょっとするタイトルですが主張は特に驚くべきことではありません。
一緒にお読みくださいませ。

2006年08月11日

"Recalls and Safety Alerts Affecting Automated External Defibrillators"

JAMA -- Abstract: Recalls and Safety Alerts Affecting Automated External Defibrillators, August 9, 2006, Shah and Maisel 296 (6): 655
とにかくAEDはlife supportの中核を担うdeviceなので気を付けないといけません。

Dr. Virginia Apgarのlegacy

Profiles in Science: The Virginia Apgar Papers

米国のNational library of medicineはprofiles in scienceという科学の分野で偉大な業績を残した人を回顧するweb pageを公開しています。
今回、そのリストにDr. Virginia Apgarが加わりました。
彼女が残した膨大な手紙や論文などがpdf fileとなって公開されているのを読むことができます。
彼女は1960年に”Genetics and anesthesia”という題名の講演を行っていますがその原稿なども読むことができます。自らの直しの入った原稿です。
"Oxygen as a Supportive Therapy in Fetal Anoxia"というタイトルの1950年の論文も入っています。
その他、彼女が行った重要な講演の原稿や、論文、またやり取りした書簡もかなり収録されています。

Apgarは"Nobody, but nobody, is going to stop breathing on me!"
--Dr. Virginia Apgar, ca. 1950s, explaining why she kept basic resuscitation equipment with her at all times.
こんなことも言っていたのですね。
いやはやたいした人です。

またこのようなpageを運営している米国にも敬意を表したいと思います。

2006年08月17日

代議員選挙

麻酔科学会の代議員選挙が行われています。
素朴な疑問としてあんなにたくさんの代議員が必要なのかなと感じています。
いったいどのようなお仕事があるのでしょうか。
また代議員の先生方は任期中の活動報告書など簡単なもので良いので皆に解る形で公表して頂くとわかりやすいと思います。

2006年08月19日

抗生ウイルス

Agency Approves First Use of Viruses as a Food Additive - New York Times

New York Timesからです

分子生物学の実験でライブラリーのスクリーニングなどがある人はbacteriophageってなにかご存じだと思います。
ファージ - Wikipedia
バクテリアに感染するなのですが、感染が成立して菌内がファージが増殖すると溶菌という現象が起き宿主の菌が死んでしまいます。
この原理を用いて、ハムやソーセージ、ターキーなど生に近い状態で食べる肉で病原菌が増殖しないようにphageをスプレーして菌の増殖を抑制するという方法が米国のFDAによって承認されたというnewsです。
恐るべし。
安全性については
http://www.fda.gov/OHRMS/DOCKETS/98fr/02f-0316-bkg0001-Ref-03-FDA-Memo.pdf
をご覧ください。

2006年08月23日

Chuvash polycythaemia

PLoS Medicine: Mutation of von Hippel_Lindau Tumour Suppressor and Human Cardiopulmonary Physiology

Chuvash polycythaemiaの患者をもちいた研究。

(Chuvash polycythaemiaは病態生理の成立にHIF-1の以上活性化が役割を果たしています。
Ang S, Chen H, Hirota K, Gordeuk V, Jelinek J, et al. (2002) Disruption of oxygen homeostasis underlies congenital Chuvash polycythemia. Nat Genet 32:614–621.
ではじめてHIF-1の関与が報告されました。)

2006年08月25日

プリンペランだって結構効く!?

Prevention of postoperative nausea and vomiting by metoclopramide combined with dexamethasone: randomised double blind multicentre trial -- Wallenborn et al. 333 (7563): 324 -- BMJ
日本ではよく使われているが、効果が不明確だとしてPONV治療薬として分のあまりよくないメトクロプラミドですが、ちゃんと使えば結構効くというお話です。
お勧めの処方は


We recommend a combination of 8 mg dexamethasone and 50 mg metoclopramide, given 30 - 60 minutes before the end of surgery

結構な量ですね。
Postoperative nausea and vomiting -- Sweeney 333 (7563): 313 -- BMJ

2006年09月01日

ketamine as anti-depressant

Arch Gen Psychiatry -- Abstract: A Randomized Trial of an N-methyl-D-aspartate Antagonist in Treatment-Resistant Major Depression, August 2006, Zarate et al. 63 (8): 856

今日知ったのですがケタミンには鬱病の治療薬としての作用があるようです。
一回のinjection、doseは0.5mg/kgですから結構な量ですが、で効果が二時間程度で現れ、一週間は持続するそうです。
ぼくならECTの前にこっちを選びます。

2006年09月08日

植物状態の患者に意識がある

今日Webで公開の雑誌Scienceに”植物状態”の基準を満たす患者に”意識”があるというevidenceがfunctional MRI上観察されたという報告が発表されています。


Detecting Awareness in the Vegetative State -- Owen et al. 313 (5792): 1402 -- Science

New York Timesでも報道されています。
Vegetative Patient Shows Signs of Awareness, Study Says - New York Times

<追記>
少し前のJCIでminimally conscious stateからの回復の可能性を遅くできるかも知れないという論文が出ていました。

Tracking the recovery of consciousness from coma" (hypoxia research::blog)

こういった分野は臨床医が大いに貢献できる分野です。ネズミの遺伝子破壊の論文とはことなり世界中の人々の大きな関心の中心をなしている立派な仕事だと思います。


2006年09月10日

VNS Therapy

重傷のうつ病や薬剤抵抗性のてんかんの治療に頸部で迷走神経を刺激するという方法があります。
VNS therapyと云うのだそうです。
Vagus Nerve Stimulation Information at VNSTherapy.com

deviceもFDAの認可を受けています。
VNS Therapy System - p970003s050

以前にも紹介したことがあると思ったのですが今日New York Timesでもまた取り上げられていました。
Battle Lines in Treating Depression - New York Times

NYTにうつ病の治療に関する記事が載る頻度は凄く多いのですが米国でも罹患者が多いのでしょうね。

2006年09月12日

ずるい

Prostaglandin E2 receptor EP4 contributes to inflammatory pain hypersensitivity -- Lin et al., 10.1124/jpet.106.105569 -- Journal of Pharmacology And Experimental Therapeutics
こんな内容で載るなんてずるい、と思います。

2006年09月24日

肺移植数が増加しているそうです

Lung Patients See a New Era of Transplants - New York Times

2005年になって米国では肺移植の数が伸びておおくの患者さんが助かるようになったという話です。
移植制度の改定が大きな原動力だと解説されています。

2006年09月30日

研修医の先生方の交代

ぼくの職場ではスーパーローテーターの先生方が三ヶ月交替で一斉に入れ替わります。
麻酔・救急のローテーターも明日から15人くらい入れ替え。
今日、オリエンテーションを行いました。手術室は病棟の勤務とかなり違うところがあるので月曜日はいつもながら結構混乱すると思います。
今までの先生方は、内科系の研修が始まります。
一年半後にまた麻酔科に戻ってきてくださいね。

2006年10月08日

The Score


最新号の雑誌the New Yorkerに"the score"と題された文章が掲載されています。副題は”How childbirth went industrial"で、著者Dr. Atual GawandeはHarvardの外科医です。

医療に関してよく科学か芸術かという問いがなされます。evidence-based medicine花盛りの現在でもこと周術期医療では厳密なコントロール研究が行われにくくまた医療のプロバイダーも医師と助産婦がいるという事情もあり難しい面があるようです。この辺の事情をある妊婦(MGHのresidentで医師)の出産を時系列に記載していくことでうまく説明しています。
因みにthe scoreとはもちろんthe Apgar scoreのことです。
著者のDr. Gawandeは調べてみるとmedical error問題の専門家のようでNew England J Medにもたくさん論文を寄稿しています。よく考えたら読んだことのある論文がいくつかありました。suregical Apgar Scoreなるものを作って妥当性を研究しているのだそうです。
研修医の先生方と読んだりするととても教育的な意味があると思います。

the New Yorkerは歴とした商業雑誌ですが、といっても定期購読すれば日本でもとても安く読むことができます ほとんど遅れることなく配達されます、webでもかなりの部分を読むことができます。
英語は少し難解ですがこの”the score”は内容が内容だけに英語は平易です。
The New Yorker: The Score

つい少し前には、子癇の研究をめぐる文章をDr. Groopmanが寄稿していました。
The New Yorker: THE PREECLAMPSIA PUZZLE
これもタメになります。
ここで紹介されているDr. Karumanchiのlabには日本からの先生方もたくさんいて活躍されています。

2006年10月09日

ためになる本のページ

●麻酔科医が読んでためになる本のリスト

作ってみました。

2006年10月17日

ずばり”科学研究費補助金データベース”

いわゆる科研費の季節です。

関係のない人には何の意味もないのですが、ある人にとっては死活問題、といっても日本は科研費がとれないからといって追い出されるわけでないので気楽ですが、それでも大問題なものなのです。

さてこの科研費実質A4の紙3枚くらいの申請で1千万とか多ければ 4千万くらい使わせてくれるという気前のいいモノなのですがどんな研究課題で誰がいつどれくらいもらっていて実際にどんな成果を出しているのかということはなかなかわかりづらいものです。
今日はその目的にぴったりのとってもよいデータベースをご紹介します。
ずばり
科学研究費補助金データベース

1972年から今年まで収録しています。
いろんな角度から解析できます。
ある大学のある学部のある講座でははいろんな先生方が種目を変えて基本的には同じ研究テーマで申請してそれが複数採択されているとかそんなことがすぐにわかってしまいます。
すくなくともみんさんが考えている課題はすでに他の誰かの科研費の課題になっているかどうかをcheckするためには役に立つと思います。キーワード検索とかできますから。
また麻酔科の分野では基盤Aという一番金額のおおい種目に採択される必要条件などが自ずと見えてきます。
いくらimpact factorの高い論文が多くても、業績欄を埋め尽くしてもどうも無理な人には無理のようです。ある必要条件がいるのです。
つまりムダな努力を省く意味でもとっても有用なデータベースであるというわけです。

とにかく眺めてみると一時間くらいは時間がつぶせます。

2006年10月18日

吸入麻酔薬が蛋白質のどこに結合するかを予想する

Prediction of Volatile Anesthetic Binding Sites in Proteins -- Streiff et al. 91 (9): 3405 -- Biophysical Journal
吸入麻酔薬の結合たんぱく質の結合部位をコンピュータで予想するという話です。
Ca2+と結合したカルモジュリン(CaM)はハロセンと結合するはずであるが、apoCaMは結合しないはずとか結構おもしろいというか都合の良い結果が提示されているのですがぼくにはこういう研究をうまく評価する能力がないので何とも言えません。

2006年10月24日

GTP cyclohydrolase and tetrahydrobiopterin regulate pain sensitivity and persistence - Nature Medicine
なんかうますぎるような気もしますが、きれいな論文だと思います。

2006年10月28日

NXY-059だめだった!?

AstraZeneca Stroke Drug Fails in a Clinical Trial - New York Times
 ラジカルスカベンジ能をもち脳梗塞の治療薬として期待されていたNXY-059は大規模臨床研究(3200人規模)で有効性の確認がされなかったようです。

2006年11月02日

SIDSの原因

JAMA -- Abstract: Multiple Serotonergic Brainstem Abnormalities in Sudden Infant Death Syndrome, November 1, 2006, Paterson et al. 296 (17): 2124
これは本当なら凄い話ですね。

”るな”が良いこと言った

るなのひとりごと : このお仕事と子育て
"るな”(って愛称だし呼び捨てにします)がいいこと言った。

やっぱりまず”オット”が子育てに協力しないと。
”オット”が早く帰り保育園に迎えに行ったり、参観日に出たり、運動会に出たりしないと”ツマ”は安心して働けません、キャリアもアップしません。


2006年11月03日

たらふく食べても長生きする!?

Transgenic Mice with a Reduced Core Body Temperature Have an Increased Life Span -- Conti et al. 314 (5800): 825 -- Science

マウスに遺伝子操作を加え下垂体の温度を0.5度ほど上げるとcore temperatureを0.5度ほど下げることができるのだそうですが、そうしたマウスはカロリー制限をしなくとも長生きするという報告です。

2006年11月04日

重症筋無力症の総説

Myasthenia gravis: past, present, and future -- Conti-Fine et al. 116 (11): 2843 -- Journal of Clinical Investigation
重症筋無力症の総説。
少し誤解していたことがありこの総説を読んでただされました。

2006年11月07日

anesthesia-resistant memoryって何だ

The Drosophila radish gene encodes a protein required for anesthesia-resistant memory -- Folkers et al., 10.1073/pnas.0608377103 -- Proceedings of the National Academy of Sciences

これはすごいタイトルが。
anesthesia-resistant memoryって何だ。
とにかく読んでみます。

利根川進氏のcommunicationだけど..

TIVAはshiveringの頻度が高い!?

Total intravenous anesthesia with propofol and remifentanil is associated with a nearly twofold higher incidence in postanesthetic shivering than desflurane-fentanyl anesthesia.
Propofolとremifentanilを用いたTIVAはfentanylとdesfluraneを持ちた麻酔に較べて術後のshiveringの頻度と程度が高いという報告です
ホントか

2006年11月09日

Infant pain

最新号の雑誌"Nature"に乳児(痛みを明示的に訴えることのできない幼いヒト)が痛みを感じているのか、またそうだとしていかにして”客観的に”それを知ることができるのかについての総説とは言えないくらい短い話題提供がされています。
よくある話だとも言えますが、なかなかよくまとまっているしreferenceもためになるものが多いです。
蘊蓄を得たからと行って臨床の現場ですることは変わりがないのですが..
Infant pain:Does it hurt?

これは胎児が痛みを感じるのかどうかに関する論文です。
JAMA -- Abstract: Fetal Pain: A Systematic Multidisciplinary Review of the Evidence, August 24/31, 2005, Lee et al. 294 (8): 947

外科医は歳をとると”ヘタ”になるのか

Annals of Surgery - Abstract: Volume 244(3) September 2006 p 353-362 Surgeon Age and Operative Mortality in the United States.
外科医の年齢と手術成績の関連を見た論文。
術式やそれまでの経験なので一概に言えないようですが複雑なものになればなるほどやはり歳の影響は出てくるようです。

2006年11月14日

グルル力が身を助ける

Googling for a diagnosis--use of Google as a diagnostic aid: internet based study -- Tang and Ng, 10.1136/bmj.39003.640567.AE -- BMJ
googleでの検索を用いてNew England Journal of Medicineで提示された症例の診断をどれくらい正確につけられるかという研究

2006年11月18日

シリコンインプラント

F.D.A. Will Allow Breast Implants Made of Silicone - New York Times
だそうである。
この記事是非読んでください。大変タメになります。

2006年11月22日

椎間板ヘルニアの治療

JAMA -- Abstract: Surgical vs Nonoperative Treatment for Lumbar Disk Herniation: The Spine Patient Outcomes Research Trial (SPORT): A Randomized Trial, November 22/29, 2006, Weinstein et al. 296 (20): 2441


JAMA -- Abstract: Surgical vs Nonoperative Treatment for Lumbar Disk Herniation: The Spine Patient Outcomes Research Trial (SPORT) Observational Cohort, November 22/29, 2006, Weinstein et al. 296 (20): 2451

椎間板ヘルニアの手術をしてもしなくとも結局同じと言うことを言っているのでしょうか。

Study Questions Need to Operate on Disk Injuries - New York Times

VNSのreview

Vagal Nerve Stimulation: Overview and Implications for Anesthesiologists -- Hatton et al. 103 (5): 1241 -- Anesthesia & Analgesia

あることを考えていてぼくは結構VNSに注目しています。
A&Aにreviewが出ていました。

2006年11月23日

Oxygen Monitor Fails to Help Doctors Detect Birth Risks

NEJM -- Fetal Pulse Oximetry and Cesarean Delivery

New England Journal of Medicineから

Nellcor社が開発した胎児用パルスオキシメータOxiFirst N-400は2000年に米国FDAの認可を得ていたが有効性の確認のための研究を継続するという条件付の認可であった。

今回5341人の妊婦を対象にした研究が行われ、胎児の動脈血酸素飽和度のモニタリングにより帝王切開の比率に変化があるか、娩出された胎児の状態に差があるかどうかが検討された。
結果、モニタリングの有効性は棄却された。
という報告です。
すでにNellcorはOxiFirst N-400の発売を中止しています。

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2006年11月29日

これでいいのかな

Hyperoxia causes angiopoietin 2-mediated acute lung injury and necrotic cell death - Nature Medicine
Ang2は低酸素でも誘導されるのでは。
またこれがヒトにも適応されるかどうかは検討の必要があるとおもいますけど。


2006年12月06日

ぼくらはこの結果は得られませんでした

Anesthesiology - Abstract: Volume 105(6) December 2006 p 1211-1219 Up-regulation of Hypoxia Inducible Factor 1[alpha] by Isoflurane in Hep3B Cells.

今日こんな論文を見つけました。
3年も前にぼくらも試しましたがこのような結果は得られませんでした。dataがホントだとするとこれはかなり強い誘導です。
Fig,3で誘導の機序を論じていますがdataがおかしいような気もします。またこのdataの解釈はHIF-1学的にはかなり恣意的です。

この論文のはるか以前にはReversible inhibition of hypoxia-inducible factor 1 activation by exposure of hypoxic cells to the volatile anesthetic halothane.
と言う論文をぼくらは発表しています。はじめAnesthesioloyだったかA&Aだったかに送ったのですが、意味のない研究だと言われて断られた記憶があります。
細胞も同じ、解析もほぼ同じなのですがなんでなんでしょうか。
ぼくらの論文も引用されていますが、さらっと流しています。

何でこんなに結果が異なるのか考えていますがよく解りません。麻酔薬のtreatの仕方も大差ないし..
もう一回やってみようかなとも思っています。

2006年12月07日

他山の石

大学病院でなぜ心臓は止まったのか
こんな本があったのですね。

こういった事例を他山の石としていかないといけないとつくづく思います。

2006年12月12日

Protein Crystallography under Xenon and Nitrous Oxide Pressure

Protein Crystallography under Xenon and Nitrous Oxide Pressure: Comparison with In Vivo Pharmacology Studies and Implications for the Mechanism of Inhaled Anesthetic Action -- Colloc'h et al. 92 (1): 217 -- Biophysical Journal
タイトルだけ読んだらなんかすごいなと思いましたが、内容を読んでみると結局何が示せたのかよくわからん論文です。
これを続けても麻酔の本態は解明できないことは確かだが必要な研究だとは思います。

2006年12月13日

HPVとTRPC6

Classical transient receptor potential channel 6 (TRPC6) is essential for hypoxic pulmonary vasoconstriction and alveolar gas exchange -- Weissmann et al. 103 (50): 19093 -- Proceedings of the National Academy of Sciences
まだ全部読んだわけではないのですが、なかなか示唆に富むおもしろそうな論文のように見えます

2006年12月14日

無痛症の原因遺伝子

雑誌Natureの最新号にパキスタンで見いだされたあるタイプの無痛症ーと呼んでいいと思うのですがーの原因遺伝子を同定したという報告が出ています。
An SCN9A channelopathy causes congenital inability to experience pain : Abstract : Nature

この無痛症患者は、あらゆるタイプの痛み感覚は無いが熱い-冷たいなどの感覚はあり、発汗もするというタイプだそうです。neuropathyもない、つまりcongenital insensitivity to pain with anhydrosis やcongenital insensitivity to pain とは異なるタイプの無痛症であると言うことだと思います。
詳しいphenotypeは論文に記載されています。

因みにきっかけになった少年は、自分の無痛を利用した大道芸の芸人であったのだが屋根から飛び降りて死んでしまったのだそうです。
このタイプの無痛症の3家系を探しだしpositinal cloningの定法に基づき遺伝子を探す過程でSCN9Aという -subunit of the voltage-gated sodium channel(Nav1.7)をコードする遺伝子に変異を見いだしたという報告です。

今回の変異は、stop codonが生み出される変異だと言うことですが、この遺伝子で見いだされる様々なSNPが個人個人で非常にことなる痛みの受容と何らかの相関があったり、また同じタイプの別の遺伝子でもそのような現象が見いだされたりするとなかなかおもしろい展開になるのだと思います。

NYTにも出ています
Gene That Governs Pain Perception Is Found - New York Times

2006年12月17日

死刑執行の失敗の結果

Lethal Injection Under Microscope - New York Times

以前にも書きました(hypoxia research::blog: 死刑に麻酔科医は関わるべきか)が米国の死刑は薬剤の投与で行われます。
薬剤の投与法に問題があれば目的が達せられない場合や大変な苦痛を死刑囚が感じることも可能性としてはあるわけですが、今回、フロリダ州での死刑執行中にV-lineが抜けて一回目の執行が目的を達せられなかったという事態が起こったようです。
結果、フロリダ州とカリフォルニア州で死刑の執行が停止されたという報道です。

"Felson"の新版がでます

医学部のポリクリは、新研修制度の導入でかつてぼくたちが経験したものと学生にとっても教える側にも意味合いが大きく変化したと思いますが、やはり生の臨床に振れる機会としては何らかの意味はあると思います。
放射線科のポリクリの担当教官の一人は伊藤春海先生でした(参照)。
胸部レントゲン写真の講義をしてくれたのですが、ぼくにとっては印象に残る授業をしてくれました。
単純胸写を示してそこからいかに肺の構造を見抜くかという話でCTや剖検の結果と関連つけての講義でした。感銘を受けて放射線科に進もうかと一時考えていました。

Felson's Principles of Chest Roentgenologyは基礎を学ぶのに適したテキストだと思います。第三版が出版されるようです。
CD-ROM付きだそうです。一応注文しました。
もう一冊
Making Sense of the Chest X-ray: A Hands-on Guide
も役立ちます。
今度翻訳が出るようです。翻訳の方が安いです。
誰もが納得!胸部X線写真の読み方
凄いタイトルですね。

Hands-On-Guideの名著にはMaking Sense of the Ecg: A Hands-On Guideも含まれます。
これにも翻訳があります。
ECGブック―心電図センスを身につける
商売上手ですね。

Hands-Onの二冊は研修医、修錬医の先生も一冊買うならこれだと云うような本ですよ。英語でも日本語でも多分大した違いは無いと思いますが、英語版はコンパクトでとっても良いですよ。ぼくはこっちを勧めます。

2006年12月28日

Opiorphin

Human Opiorphin, a natural antinociceptive modulator of opioid-dependent pathways -- Wisner et al., 10.1073/pnas.0605865103 -- Proceedings of the National Academy of Sciences
Opiorphinって勉強不足でさっきまで知りませんでした。
すごく強い鎮痛作用を持っているようです。

2007年01月04日

そうだったんだ

Studies Find Harm in 2 Parkinson's Drugs - New York Times
そうだったんだ。これは知りませんでした。

2007年01月12日

今日から学生の授業がはじまりました

職場では、今日から医学部の学生への麻酔・救急の授業が始まりました。

初日なので毎年出席者は多いのですが、特に今年は多かった。
みんな熱心です。
授業の後、質問に来てくれた学生さんもいました。

吸入麻酔に関する授業をしたのですが、今日の授業の内容で手術室で直接役立つと思われる内容は残念ながらあまり無いと思います。だといってconcentration effect, second gas effectなどの理解無しに吸入麻酔薬を患者さんに使うのも失礼なような気もします。
現在、麻酔科をローテーとしている研修医の先生や修錬医の先生に抜き打ちテストをしてみようかな。どれくらい吸入麻酔薬の事をキチンと理解して麻酔をしているのでしょうか。
リバース(アトロピン+ワゴスチグミン)が何をリバースするのかわかっていない先生はいらっしゃいました。3ヶ月の研修でも基本的な知識はしっかりと身につけてから手術室に出ないといけないと思います。

一応
Miller's Anesthesia: 2-Volume Set
の該当部分は全部読んで授業に臨んでいます。
何せ授業は、ぼくが給料をもらっている理由のうち一番大きいものだと思うので手は抜けないです。

2007年01月24日

専門医の試験を解いてみました

雑誌”麻酔”の2006年12月号を今日読んでいて”(社)日本麻酔科学会 2006年度 第44回麻酔科専門医認定筆記試験問題(解答付)”を発見。
早速解いてみました。全部で200問。
結構いけました。一つ一つのstatementの正誤を問われると難しいのですが選択肢があるので最終的には”正解”してしまうことが多いわけです。
というわけで昨年受けていたとしたら筆記試験は多分合格。
良い問題ばかりという印象を持ちました。問題のための問題は無いとはいいませんが数はかなり少なくそれを落としても十分に合格すると思います。

毎日麻酔をしているので文献を調べたり教科書を読んだりする機会があり知識の減衰が防止され何が重要かも分かっていくのだと思いました。特に"C"問題は麻酔をしっかりやっていればなんと言うことは無いという感じです。
その意味では試験を作っている先生方の努力は並大抵のものでは無いと思います。

2007年02月17日

「マンスリー」に参加してきました

麻酔科学会の関西地方会の症例検討会、通称マンスリーに修錬医の先生方と参加してきました。
雨だったのですが大勢の参加者が集まっていました。
びっくり。

2007年02月20日

学位の講演会ーまた

学位の講演会がまた開かれました。

専門委員ー審査員の補佐みたいなものですが最後に一緒に判子押しますーとしてぼくも参加しました。

H先生の研究は、遺伝子破壊マウスを用いて吸入麻酔薬の作用機序を検討するという麻酔科ど真ん中の研究です。
審査の先生方は麻酔の専門家でないので麻酔ってどんなものかを一応理解していただいた上で話を進める必要があります。
これがなかなか難しいですよ。鎮静度はBISでわかりますというかそんな話をしても不十分だし。麻酔にかかったヒトを見たことのない人にはなかなか”わかって”もらえないこともあります。それ故結構naiveな質問もあり、意外と答えるのがむずかしいという局面にもぶち当たります。

第一関門ーといってもこれが実質的には最終関門なのですがー突破おめでとうございました。

その後、今度ーやはり来月になるかー講演会をする先生の予演会にお付き合いしました。
dataは複雑でないのですがやはりintroductionをどう持って行くかが問題ですね。
審査には相当の専門家が来ますので気を抜けません。もうしばらくもっともっと悩んでそして考え抜いて本番に臨んでくださいませ。

2007年02月22日

たぶんQED-100の論文

Hypercapnic Hyperventilation Shortens Emergence Time from Isoflurane Anesthesia -- Sakata et al. 104 (3): 587 -- Anesthesia and Analgesia

例の揮発性麻酔薬からの覚醒を早めるdeviceを用いた研究です。
意外にもpeer reviewed journalにfull paperとして掲載されたのはこれがはじめてなのでしょうか。
今度ぼくたちの麻酔科のjournal clubで皆にも紹介することにしました。

2007年03月01日

これには心底驚いた

今日British J Medicineを読んでいて以下のassayみたいなものを見つけてびっくりしました。
Doubts over head injury studies -- Roberts et al. 334 (7590): 392 -- BMJ

Managing suspected research misconduct -- Young and Godlee 334 (7590): 378 -- BMJ


2000年から2002年にかけて発表された以下の3篇の論文の元になる臨床治験が実際には行われていなかったのではないかという疑惑に関する文章です。

Cruz C, Minoja G, Okuchi K. Improving clinical outcomes from acute subdural hematomas with emergency preoperative administration of high doses of mannitol: a randomized trial. Neurosurgery 2001;49:864-7
(PubMed)

Cruz C, Minoja G, Okuchi K. Major clinical and physiological benefits of early high doses of mannitol for intraparenchymal temporal lobe hemorrhages with abnormal pupilary widening. Neurosurgery 2002;51:628-38
(PubMed)

Cruz J, Minoja G, Okuchi K, Facco E. Successful use of the new high-dose mannitol treatment in patients with Glasgow coma scores of 3 and bilateral abnormal pupillary widening: a randomized trial. J Neurosurg 2004;100:376-83
(PubMed)

論文の第一著者のCruz氏は2005年に自殺してしまい、他の著者Minoja氏と Okuchi氏はBJMの問い合わせに対して自分たちは何も知らないという返事をしたとのことです。

ここで問題になっているのは、頭部外傷患者にmannitolを投与する場合にhigh dose(おおむね1.4 g/kg)投与する治療とlow dose (おおむね0.7 g/kg)投与する治療法ではhigh doseの投与が患者の予後を有意に改善すると報告です。
本人が死んでいて研究の記録などは残っていず、客観的にもこのような治験が行われたという証拠がないのだそうです。
Cochrane databaseでは当初これらの論文を採択していましたが、途中で解析対象から除外したそうです。
ここまで来るとどうしようもないですね。共著者の人の責任はあると思うのですが..

最近
PLoS Medicine - When Should Potentially False Research Findings Be Considered Acceptable?
assayを読んだのですが、これはdataは実在して捏造などされていないことを前提とした考察ですからね。

良い査読者の条件

集中治療学会ですが、当直です。明日も留守番です。
今日は早々に手術が終わりました。いつも学会で症例に制限がかかっていても趣旨を理解せず無理に長い手術をしたりする科があるものですが今日は、ほぼ各科時間通りに終了してくれました。
いつもこうだと仕事がはかどります。

PLoS Medicine - The Relationship of Previous Training and Experience of Journal Peer Reviewers to Subsequent Review Quality
という論文を紹介します。

PLoS Medicineからです。

学術雑誌には査読という制度があります。
どの雑誌でも、投稿された論文はeditorの差配のもと専門家による査読(review)を経て、掲載の可否が決まり首尾よくいけば出版されます。

優れた論文が世の中に出ていくためには、よいreviewが必要なのですが、reviewはreviewerという人間あってのものですから事情は複雑です。reviewerが投稿した論文のauthorと何らかの利害関係があるような場合には科学的によいreviewは期待できないだろうし、そもそもreviewerにしっかりとした能力がないとreviewが成立しません。特にその分野の専門家でもないのに安易に査読を引き受け投稿された論文の参考文献をdownloadして、その分野の知識を得た後reviewをはじめるreviewerなど不適切なreviewerと言えると思います。
つまりreviewerがいてreviewがあるわけですから雑誌のeditorは良いreviewerを見分けてそこに査読を依頼しないといけません。ではどういう人がよいreviewerなのだろうかという問題がこの論文で論じられています。

大学病院の医師であることまた年齢が若いこと(正確には、トレーニング終了10年以内)が良いreviewerの条件であるという結論が出てきています。


Annals of Emergency Medicineという救急医療関係の臨床雑誌の査読について検討が加えられました。この雑誌は、査読者に対して、著者または著者の所属がblindになっています。
15年間にわたって、査読者の査読にeditorが6項目の観点から5段階のratingをします。
査読者のに関する変数はtableの様なアンケートで集めます。

検討は、査読者の変数と査読のratingの間で統計的に行われました。
結果として、大学病院の医師であることまた年齢が若いこと(正確には、トレーニング終了10年以内)が良いreviewerの条件であるということが浮かび上がってきたというわけです。

日本人にはこれに加えて英語の要素が加わります。英文雑誌だと思っていたら日本語でreview commentが書いてあるのには閉口しました。何とかなりませんかね。日本語でこの論文の英文には特に問題がないというようなコメントが書いてあるのだから困ったものです。

やけどの深さと免疫能

Innate response to self-antigen significantly exacerbates burn wound depth -- Suber et al., 10.1073/pnas.0609026104 -- Proceedings of the National Academy of Sciences

これはおもしろい論文です。しっかり読んで紹介します。

2007年03月09日

病院発表

京都大学-お知らせ/ニュースリリース 2007年3月9日 医学部附属病院心臓血管外科における手術の自粛について

2007年03月11日

Erythropoiesis-Stimulating Agents

FDA Strengthens Safety Information for Erythropoiesis-Stimulating Agents (ESAs)

ertythropoietinは腎不全患者などの貧血の進行の防止の為に使用されていますが、FDAから乱用に注意を促す勧告が出ています。
腎不全患者に使用すると死亡率、血栓形成、脳梗塞、心血管イベントの頻度が上昇するばかりか頭頚部癌の進行を早める鹿瀬医があるとのこと。
EPOの生理的な作用を考えたら当然とも言えるのですが臨床治験でこういったことが示されるというのは重要事だと思います。

insulinなども腫瘍の増殖を誘導する作用はあります。こちらはどうなんだろう。

2007年03月13日

悪口をいわれているようだ

普段は、テレビも見ないし新聞も手術室の毎日新聞しか読まないので知らなかったのですが、どうもぼくらは悪口を言われたり書かれたりしているそうですね。

いろんな人が心配して教えてくれます。

どうしたらいいんでしょう。
真相をぶちまけるとかそうしたらよいのかな。

2007年03月17日

SOS-KANTO

Cardiopulmonary resuscitation by bystanders with chest compression only (SOS-KANTO): an observational study; The Lancet

日本大学の先生が主導した4000人規模の治験の結果です。
out-of-hospital cardiac arrest の患者に
cardiac-only resuscitation from bystanders
conventional CPR
no bystander CPR
が施されました。
一番成績の良かったのはcardiac-only resuscitation from bystandersだったという報告です。
とにかく心臓を押し続けるのが良いのかもという結果なのでしょうか。


2007年03月21日

論文出てました

Comparison of continuous intraarterial blood gas analysis and transcutaneous monitoring to measure oxygen partial pressure during one-lung ventilation - Journal Article

出てました。

今や使われなくなってしまったパラドレンドと経皮酸素分圧モニターを比較した報告です。
菊池くんは、このとき一年目の研修医として麻酔科を廻ってきてくれていた先生です。

論文がでます

以前勤務していた大阪の北野病院(参照)で関わった研究の成果をまとめた論文が掲載受理されました。

"Exhaled carbon monoxide levels change in relation to inspired oxygen fraction during
general anesthesia Takehiko Adachi, Kiichi Hirota, Tomoko Hara, Yukiko Sasaki and Yasufumi Hara Anesthesia and Analgesia, in press"

これはとても興味深い現象です。足立先生がデータを取っていて見つけました。
呼気中のCOを測定して何かの指標にしようとする場合、絶対に考慮する必要のある現象です。
機序なども考えると結構奥深いものがあると思います。

この研究は日本学術振興会の科学研究費をもらって遂行したものです。北野病院に在籍している医師は北野病院に在籍したまま科研費に応募できるという特典があります。
すごいでしょう。

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2007年04月02日

universal red blood cells

Bacterial glycosidases for the production of universal red blood cells - Nature Biotechnology
こりゃすごい話だな。


2007年04月10日

学位講演会

今日、麻酔科のM先生の学位審査会がありました。
神経関係の専門家お三方とぼくが専門委員として参加。
ギャラリーとしてのうちの院生の先生の参加がいつになく多かったです。

冒頭のH先生のいきなりの指摘にすこしびびったと思います。途中もみなさんに結構ジャブを入れられどうなるかなと思っていましたが最後まで何とかたどり着きました。
議論では結構厳しい指摘を受けとまどったと思います。F先生もT先生も専門家ですから仕方ないです。基本的なスタンスの違いとも言えなくも無いですが結論をつよく主張したいのならいくつかの実験も考えられたかも知れません。
結果として試問には合格と云うことでおめでとうございました。
学位の書類というのはづっと残るので書き直しがあっても仕方ないですよ。

2007年04月14日

紀伊國屋書店にて..

金曜の午後梅田に出ました。
人と待ち合わせをしたのですが少し時間があったので紀伊国屋に寄ってみました。
研修医の先生向けの医科学書のコーナーができていましたー看護師さん向けのコーナーはもっと広く取ってありましたー。とてもわかりやすい本がいっぱいです。研修医の先生向けの雑誌もあってびっくりしました。今の先生がたは幸せだと思います。

全部読んだらかなりの量の実践的な知識を身に付けることができると思います。ぼくが”研修医”なら全部読む!!
その反面、イラストや写真が満載ですぐに役に立ちそうでいて大したことが書いていない本もありました。ここら辺は後でないと解らないかも知れません。だから迷わず全部読む!!

麻酔関連では、”さぬき本”にpopが立っていました。紀伊国屋でも売れ筋なのでしょうか。これから買う人は、改訂版を買ってください。

麻酔とは直接関連はないですが
ステップビヨンドレジデント 1 救急診療のキホン編
のシリーズはすばらしいと思いました。現在も雑誌での連載が続いているようです。今月はsepsisのEarly Goal-Directed Therapyが取り上げられていました。

2007年04月20日

膣、口、直腸

Doctors Try New Surgery for Gallbladder Removal - New York Times
膣からscopeを挿入して胆嚢を摘出したり、口からscopeを入れて虫垂を切除したりするそうです。


2007年04月26日

経口気管挿管

NEJM -- Orotracheal Intubation
cross finger法での開口はしていませんね、このビデオでは。

BLSの実習

学生さんは臨床実習(診療参加型臨床実習と呼ぶらしい)に進む前提として、CBT(-参照)とOSCE(参照)を突破する必要があります。
BLSができると云うのも要件の一つということで実習を小グループでしていただきます。
結構身体を動かすので二時間以上の実習はきついですね。


何度も実演しているとどんどんうまくなっていくような気がしますが、実のところby-standerとして蘇生をしたことはありません。
いろんなところで行われている講習会ってどんなんでしょうね。一回見てみたいような気もします。

2007年05月03日

Imagination of Pain

朝から丸一日当直です。
やっぱり働きましたというかまだ来るかも知れません。

さて
asahi.com: 脳内メカニズム解明 写真見て「痛い」 群馬大院教授ら - サイエンス
で紹介されていた論文を読んでみました。
Inner Experience of Pain: Imagination of Pain While Viewing Images Showing Painful Events Forms Subjective Pain Representation in Human Brain -- Ogino et al. 17 (5): 1139 -- Cerebral Cortex
写真のセットを被験者に見せて、痛そうと想像してもらいます(Imagination of Pain)。一方別の怖い写真を見せて、恐怖心をあおります(emotion of fear)。これらとrestの状態のの脳の様子をfMRIで観察したことろ、Imagination of Painでは、insulaとかACC(ant. cigulate cortex)が、emotion of fearではamygdaraとACCの活動の亢進が観察され、実際の侵害刺激なしにImagination of Painだけでpain-related neural networkが特異的に活性化するという報告だと思います。

これをInner Experience of Painと言えるかどうかは、議論の余地が大ありだと思います。
ぼくとしてはちょっと違うだろうと思いますが、"Inner Experience of Pain"というのはこの業界での術語になっていてとくに哲学的な用語では無いのかも知れません。素人なので何とも言えません。

これもおもしろいが
Intrinsic functional architecture in the anaesthetized monkey brain: Abstract : Nature
これはもっと意味深長で良いと思います。

2007年05月08日

今週の一押し2007-#18:"Better: A Surgeon's Notes on Performance"

Better: A Surgeon's Notes on Performance

Atul Gawande(参照)の新作です。
前作に引き続き医学医療は発展途上のいまだに不完全な科学であるという立場から医学をめぐる様々なトピックスを随筆風に語ったものです。
雑誌New Yorkerに最近発表されたモノを読むことができますのでこれらを読んでのち本の購入を考えたら良いと思います。
Complications: A Surgeon's Notes on an Imperfect Science

Annals of Medicine: The Way We Age Now: Reporting
Annals of Medicine: The Score: The New Yorker

医学部の学生や研修医の先生に読んでもらうのは適していると思います。
何人か参加してくれたら読書会をひらいてもいいのですが、みんな忙しいか。

邦訳は出版されていませんが、英語は平易で辞書なしでも読むことができると思います。

いわゆる入局説明会の案内

恒例の、職場(京大病院麻酔科)の修練医(後期研修医)の先生方のための説明会が開かれます。毎年少しずつ前倒しになっています。

まず5/20これは初期研修医の募集のための説明会(参照)ですが、麻酔科もブースを出します。現研修医の先生で説明を聞きたいという方がいらしたら連絡下さい。

修練医の先生方向けの説明会は7/8と8/26(参照)に開かれます。麻酔科もこれらに合わせて個別説明会を行います。

なお京大麻酔科のHPはここからどうぞ。
大学院生の募集もやっています。

2007年05月09日

脳出血の治療指針

Guidelines for the Management of Spontaneous Intracerebral Hemorrhage in Adults. 2007 Update. A Guideline From the American Heart Association, American Stroke Association Stroke Council, High Blood Pressure Research Council, and the Quality of Care and Outcomes in Research Interdisciplinary Working Group -- Broderick et al., 10.1161/STROKEAHA.107.183689 -- Stroke
一度は目を通しておいた方がいいかも

"Doctors Reap Millions for Anemia Drugs"

Doctors Reap Millions for Anemia Drugs - New York Times
erythropoietin製剤の販売促進のために、AmgenとJohnson & Johnsonが医師に多顎のお金を提供していたという話です。
米国では一人の透析患者へのEPOの投与量が日本の5倍程度となっているのだそうです。世界一です。

2007年05月18日

"ミラー麻酔科学"

Miller's Anesthesia: Text With Continually Updated Online Reference

の日本語訳が出版されたそうです。

ミラー麻酔科学

必要もないのでまだ”読んで”いないのですが、多分どちらを選んでも大きな違いは無いだろうし値段の差も誤差範囲ということで英語版を辞書を使って読むくらいなら翻訳版を読んだ方がいいような気もします。
とにかく読むことが重要で、麻酔を生業としているのならやはり一回くらいは通読するのが良いと思います。
通読したからといって麻酔がうまくなることはないのですが、だからといって読まなくて済まされるわけでもないと思いますのでやっぱり買って読めということになるのでしょうか。

といってもこの内容なら、各雑誌に不定期に掲載されるreviewを5年分くらい集めて読んでも大した変わりはないと思いますが集めたりする暇が無いかも知れません。

原書は"Miller's Anesthesia"なのだから訳は"ミラー麻酔"となるべきのような気もしますが.. 気にしないきにしない。
因みにぼくらの教室は
Department of Anesthesia, XX University Hospitalと表記する約束に昔からなっています。
ぼくは好きですね。Department of Anesthesioloyとか呼ばれるより上等だと思っています。

ただこんなのが出版されたら確実に
臨床麻酔学全書
は売れなくなるな。

Harrison's Principles of Internal Medicine (HARRISON'S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE) (Single Volume)

ハリソン内科学 第2版 (原著第16版)

の関係ではまだまだ英語版のアドバンテージはあります。
値段が安い!!
この程度の値段なら買って手元に置こうという気もします。

続きを読む ""ミラー麻酔科学"" »

2007年06月11日

Acute Wiiitis

Wii-itis

くわしくはここを読む

2007年06月12日

"臨床サイトカイン学"

臨床サイトカイン学


LiSAに連載されていた小論文などが一冊にまとめられています。

詳しくはこちら

"周術期の呼吸管理”

周術期の呼吸管理
出てます。

くわしくはこちら


2007年06月13日

術前のヘマトクリット値の異常と手術死の関係

JAMA -- Abstract: Preoperative Hematocrit Levels and Postoperative Outcomes in Older Patients Undergoing Noncardiac Surgery, June 13, 2007, Wu et al. 297 (22): 2481

術前のヘマトクリット値の異常が手術後30日以内の患者の死亡のリスク因子であるという報告。

くわしくはこちら

2007年06月21日

科学研究費補助金データベースが更新されていました

科学研究費補助金データベース
に平成19年度採択課題が収録されて更新されていました。

麻酔科の分野に限らないのですが、どんな研究課題に研究費が出ているのかを調べることができます。

一般的なのデータベースですので一件で億単位のようなbig projectなどはここには載っていません。

2007年07月07日

航空機の中での高山病

高山病は、3000m級の高地では発症する可能性があるといわれていますが、日本の2000m級の高地でも発症します。2000m級は,7000-8000ftにあたりますが,実は航空機の機内は565mm Hgに調整されいてこれは8000ft相当の圧なのだそうです。つまり飛行機の中で乗客が高山病を発症する可能性があるということになります.
いったいどうなるのかを調べたのか以下の論文です。
NEJM -- Effect of Aircraft-Cabin Altitude on Passenger Discomfort

詳しくは
paper-of-the-week-27
で。

2007年07月08日

入局説明会

いわゆる入局説明会が今日の午後あったのですが、大勢の先生方に参加していただきました。ありがとうございました。二人くらいしかこなかったらどうしようとか朝から心配していました。

自分の進路をどうするのかというのは選び取るのがなかなか難しい事なのですが、一つだけ言える事は、ある選択をしたとしてそれが間違えだったとか、もっとよい選択肢があったと思ったときは、進路を変える事ができるという事です。
今の若い先生方には、fast trackで自分の理想像に向かって走っていかないと思っている人が大勢いらっしゃるような気がします。

というわけで,だまされたと思ってぼくらの麻酔科にどうぞ。

2007年07月20日

イソフルレン感受性のイオンチャネルのクローニング

Determinants of the Anesthetic Sensitivity of Two-pore Domain Acid-sensitive Potassium Channels: MOLECULAR CLONING OF AN ANESTHETIC-ACTIVATED POTASSIUM CHANNEL FROM LYMNAEA STAGNALIS -- Andres-Enguix et al. 282 (29): 20977 -- Journal of Biological Chemistry

Franks氏のlabから。
さすがに麻酔の機序が説明できるとかの妄想みたいなことは主張していません。

2007年07月28日

告知する猫

New England Journal of Medicineからです

米国ロードアイランド州プリビデンスのある病院に住み着いている猫オスカー君(二歳)は,特別な予知才能を持っているようです。

続きを読む@bodyhacking::blog

2007年07月31日

これには参りました

宮大医療過誤訴訟で賠償命令 宮崎地裁判決 - 県内のニュース - miyanichi e press
この手の話題は取り上げない事にしていたのですが、これは強烈だな。

2007年08月07日

酸素療法の脳への効果と二酸化炭素

PLoS Medicine - Hyperoxic Brain Effects Are Normalized by Addition of CO2

PLOS medicineからです

生体内のすべての細胞は生存に酸素を必要とします。酸素は肺で空気から血液中に吸収される訳ですが健常人においては酸素を21%含む空気を呼吸することで組織を正常に保つ酸素ためには十分でです。しかし組織への酸素運搬を改善する必要がある医学的な状況も存在します。例えば、蘇生後または脳梗塞の後など脳への酸素供給が障害されてい場合、また未熟児は肺が未成熟な故に酸素を十分に効率的に取り込むことができないので、これらの場合、高酸素分圧の気体を肺に供給することで酸素供給を増加させることを試みます。これをhyperoxic ventilationとこの論文では提議します。しかし、逆説的に、hyperoxic ventilationは事態を増悪させる可能性をもつという報告があります。hyperoxic ventilationは肺胞換気量を増大させ血中の二酸化炭素濃度を低下させる。低二酸化炭素血症は血管の収縮をもたらし脳への血流を減少させる。高酸素血症はまた心拍数、血圧やある種のホルモンの血中濃度を変化させる、というスキームです。おそらく脳内で自律神経の調節に関わる領域に何らかの作用を及ぼすのだと考えられています。
このような問題を解決する方法として高酸素濃度ガスに少量の二酸化炭素を加えるという方法が存在します。これにより脳血流が維持されると考えられているのですが、しかし、いままでこのような二酸化炭素の添加が脳内の自律神経の調節中枢における働きは明らかになっていませんでした。
この論文では、functional MRIの技術をボランティア14人(8-15歳つまり小児を用いた研究)を適用した研究成果が報告されています。

空気の吸入に続き、100%酸素または95%酸素+5%二酸化炭素を二分間吸入する。100%酸素吸入では速やかに視床下部と視床下部への投射を領域(島,海馬)でのシグナル増大が観察された。一方95%酸素+5%二酸化炭素の混合ガスの吸入では高酸素血症は起こるもののこれらの領域でシグナルの増大は観察されなかったか、有意に抑制されていた、という結果です。

という訳で、5%二酸化炭素の添加は高酸素血症が引き起こす脳の反応の一部を抑制するという結論に至った、という報告です。

あくまで、健常小児を覚醒下で調べた結果です。

The Journal of the American Society of Anesthesiologists, Inc. - Anesthesiology Fulltext: Volume 106(5) May 2007 p 1051-1055 Hyperoxia-induced Tissue Hypoxia: A Danger?

こんな論文も存在します。高酸素血症の功罪というのは未だ臨床の分野では確定している訳でなく、全身麻酔後という特殊な条件下でどうかということもよく解らんのですね。

それでは全身麻酔後にどれくらいの酸素をどれくらいの時間投与すればいいのでしょうか?

2007年08月14日

肺炎と敗血症のサイトカイン反応の多様性

Arch Intern Med -- Understanding the Inflammatory Cytokine Response in Pneumonia and Sepsis: Results of the Genetic and Inflammatory Markers of Sepsis (GenIMS) Study, Aug 13/27, 2007, Kellum et al. 167 (15): 1655

Archives of Internal Medicineから
GenIMS(Genetic and Inflammatory Markers of Sepsis) studyからの報告です。

bodyhacking::blog - paper of the week#32

で要約しておきましたが、とても重要な論文なので自分で読むことをおすすめします。

2007年08月24日

呼気CO濃度は吸入酸素分圧に影響を受ける

Exhaled Carbon Monoxide Levels Change in Relation to Inspired Oxygen Fraction During General Anesthesia -- Adachi et al. 105 (3): 696 -- Anesthesia

出てました。

これは実は結構重要な研究です。

続きはこちらで

2007年09月11日

完徹

現在の進行状況ではほぼきまりです。
年に二三回はありますね,完徹。

研修医の先生と二人旅というのがせめてもの救い。


2007年09月16日

Albert Lasker Award

The Lasker Foundation | Awards | This Year's Winners
今年度のLasker賞が決まったようです。

樹状細胞の発見
心臓の人工弁の開発
AIDS、生物兵器防衛プログラムの構築

の業績に対して4人の科学者に決定


2007年09月20日

硫化水素の効能

Hydrogen sulfide attenuates myocardial ischemia-reperfusion injury by preservation of mitochondrial function -- Elrod et al., 10.1073/pnas.0705891104 -- Proceedings of the National Academy of Sciences

PNASから
最近何かと話題になっている硫化水素(H2S)ですが、今度は心臓の虚血再潅流障害を軽減する作用と持つとの報告です。

2007年10月04日

マクロファージ、好中球からのカテコラミンが炎症の進展に果たす役割

Phagocyte-derived catecholamines enhance acute inflammatory injury : Article : Nature
これはとても興味深い論文です。
alpha2 受容体の刺激は少なくともマウスの肺の炎症にはよくないというdataも含まれています。

しびれない局麻薬

非透過性ナトリウムチャネル遮断薬のTRPV1を介した進入による侵害受容器の抑制 : Abstract : Nature
うかつにも今日まで知らなかったのですが、雑誌Natureにとても面白い論文が掲載されています。lidocaine分子を修飾して電荷を帯びさせてQX-314という名前の化合物をつくるとこの物質はTRV-1 channelをTRV-1 ligand依存的にこのchannelを通り細胞内に到達してNaチャネルをブロックできるようになるそうです。つまりTRV-1 チャネルを発現していない細胞、またTRV-1のアゴニストの非存在下では局麻薬としての作用を発現しない形の局麻薬だできたというわけです。
機械刺激と熱による刺激はブロックするが運動と触覚は残るのだそうです。

これは頭がいいですね。

[追記]
NIHからのpress release
Treatment Blocks Pain Without Disrupting Other Functions, October 3, 2007
News Release - National Institutes of Health (NIH)

2007年10月09日

輸血はなぜ悪いか

Article | Reuters Donated blood quickly loses important gas-study

DukeのStamlerのlabの研究成果のnewsです。

輸血が患者の予後をかえって悪くするという数多くの研究が有ります。なぜかということを追求した研究結果についての報道。

供血者から採血して保存した血液中の一酸化窒素は循環血液中と比較して非常に低くーまたこの低下は採血後すぐおこるーこのような血液を輸血する事によりかえって組織への酸素供給が悪くなってしまうということが起こるとの事。驚くべき事に貯蔵血液にNOを戻してから輸血するとこのような副作用は観察されなくなるのだそうです。血管拡張や赤血球の変形能、ヘモグロビンの解離曲線の移動など理由はいろいろあるのでしょう。
これからは血圧が下がらない程度のニトログリセリンやイソソルバイドを使うのがはやるのでしょうか。特に大量輸血をするような場合は。

詳細はPNASにでるはずですが今現在まだ読む事はできません。多分明日には読めるようになっていると思います。

Stamlerと話した事がありますが、ホンと頭よさそうした。

2007年10月23日

pulse co-oxymeterで喫煙状況をモニターする

Carbon monoxide test helps doctors determine patients' smoking status
ChicagoでのCHEST2007での報告。
pulso cooxymetryを用いてcarboxyhemoglobinの割合を測定し、6%を超えている場合には喫煙者と推定する事ができるとの報告。

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2007年10月30日

ACC/AHA 2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery

ACC/AHA 2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Writing Committee to Revise the 2002 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery): Developed in Collaboration With the American Society of Echocardiography, American Society of Nuclear Cardiology, Heart Rhythm Society, Society of Cardiovascular Anesthesiologists, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society for Vascular Medicine and Biology, and Society for Vascular Surgery -- Fleisher et al. 116 (17): e418 -- Circulation
出てます。
分量は多いですが意味のある部分は70ページ足らずです。
時間のない人は8章のAnesthetic
Considerations and Intraoperative Managementの部分だけでも読んだらよいと思います。

2007年11月06日

トラジロールの終焉

Bayer Withdraws Heart Surgery Drug - New York Times
トラジロールもう使えなくなります。
[追記]
さらに追加記事
Heart Surgery Drug Pulled From Market - New York Times

2007年11月15日

Hypoxic vasodilationの機序

Cytochrome c oxidase regulates endogenous nitric oxide availability in respiring cells: A possible explanation for hypoxic vasodilation -- Palacios-Callender et al., 10.1073/pnas.0709440104 -- Proceedings of the National Academy of Sciences
Hypoxic vasodilationの機序に関してMoncadaのlabから
とてもユニークなtheoryです。
これがmailの機序ならいままでの研究者は何をしていたのかということになりますね。

air hunger

Coughing induced by airway irritation modulates the sensation of air hunger -- Nishino, 10.1113/jphysiol.2007.145276 -- The Journal of Physiology Online

air hungerという言葉を知りませんでした。想像はつきますが.
この研究58人の学生さんが被験者になったようです。

wikipediaで調べると果たして出ていました。Air hunger - Wikipedia, the free encyclopedia

2007年12月01日

今週の一押し:2007-#38:死因不明社会

死因不明社会 (ブルーバックス 1578)

柏から銚子までの列車の中で読みました。

チーム・バチスタの栄光
の海堂 尊氏-ペンネームですが,ググれば本人がどなたかは簡単にわかると思います-のブルーバックス。
Autopsy Imaging(参照)の啓蒙書です。
多くは書きませんが,臨床医なら一度は読むべき本だと思いました。
力が入りすぎていて海堂氏の議論についていけない部分もありますが、"AI"を核とした枠組みが医療において重要性を増していく可能性は大きいと思います。

今すぐクリックして注文すること!!

2007年12月07日

ketamine-活性酸素

Ketamine-Induced Loss of Phenotype of Fast-Spiking Interneurons Is Mediated by NADPH-Oxidase -- Behrens et al. 318 (5856): 1645 -- Science
麻酔薬のケタミンがニューロンに作用するとNADPH oxidaseに依存した活性酸素の発生を促し、脳内の抑制性インターニュロンの機能不全を促し、特に長期連用では精神状態の変容をもたらす可能性を示唆した報告です。

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