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”特典”なんていらない

柳田先生のブログで学位取得者に”社会的な特典”を与えるともっと理系の大学院に人材が集まりこれはひいては日本の将来のためになるという持論を展開されています。
いろんな資格がありますが、修士号、博士号は 資格とは違いますから特別扱いは難しいのでは無いかと思います。医師免許無しに虫垂切除したらたぶん警察に捕まりますが、博士号など無くともノーベル賞はとれます。
こういったことの前に、理系大学院教育を改革する方が先だと思います。個人的には医学系の大学院教育というのはかなり改革の余地があると思います。

それより柳田先生の云われる”特典”とは何かということが気になります。
以下のエントリーを読めば柳田先生の意味する”特典”には高収入の保証と言うことが入っていると云うことがわかります。

柳田先生は”医師免許保持者”が皆一様に高収入を得ていると考えておられるようですがこれは必ずしも真ではありません。
国立大学法人の教員の給与は柳田先生もご存じだと思うのですが、文学部の教員も医学部で診療を実際に行っている教員でも基本的に同じです。どんなに遅くまで診療にたずさわっていても例えばぼくにはいわゆる超過勤務の代金など出ません。他学部の教員と同じようにいわゆる裁量労働制が導入されていますーそうでない教員もいますがー。もちろん博士号など持っていても給与に一円も上乗せなどありません。
市中病院で勤務している医師でも比較的に高い収入を得ることができるわけでありません。ぼくは、数年前某政府系研究所を辞めて某市中病院に転職しましたが収入は落ちました。研究所では患者を診ていませんでしたし、当直も無し、教育の義務も無しでした。
このように、研究職と云うのは結構恵まれているというのがぼくの実感です。
別に”特典”なんて要らないですよ。


柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida : 久しぶりに応酬あり


しかし、講演のあとで、静岡県の高等学校の先生をしている方が話しに来て、いい案だと思うと、いってくれました。さもないと、ほとんどの理系人材は医学部に行ってしまうと言うご意見でした。
医学医療は生命科学のごく一部ですし、それじゃ困るのです。その先生のご意見は、特典が与えられたら、進学者のパターンはガラッと変わるのではないかという、ものでした。

柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida : なぜ理系出身者のトップが日本ではすくないのか?

優秀な理系受験生が所得のたかい医者を養成する医学部に殺到しているのも矛盾の例である。企業は官庁でも学力が高く、学生時代に文系より勉強してきた理工系の人材を大切にせねばならない時代となっている。 -- 橘木さんは日本各地の最上位富裕層を調査してやはり医者の比率が非常に高いことを指摘しています。日本の社会における、ここ数年で顕著になった経済格差の広がりを最初に指摘した人でもあります。

柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida : 学位取得者の社会的な特典

ニワトリと卵どちらが先かですが、世の中の若者はそういう特典には非常に敏感です。そういうルールこそが新しい卵になるのではないでしょうか。 また一番問題になりつつある、博士取得者の生涯キャリアーについても、あらたな明るい展望が生まれるに違いない。 医学部への異常な程の人気も変わるかもしれません。また文系でも学位取得を希望する若者が増えるにちがいありません。

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2006年08月21日 21:30に投稿されたエントリのページです。

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