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今週の一押し:2007-#22:"若き数学者への手紙"

若き数学者への手紙

原題は”Letters to a Young Mathematician (Art of Mentoring)”


ある数学者が、数学に興味を持った姪?の「メグ」にあてて書いた21通の手紙。イアン・スチュアートによるフィクションです。
メグが高校生、大学生、院生、ポスドク、助教授を経て数学者としての階段を上っていくメグにその時々に応じたアドバイスをしていくという内容になっています。
数学とはどんな学問なのか,学問の広がりを歴史的に解説したりが主体の手紙もあれば,数学とはあまり関連は無いが却って理解の学問に共通な研究者としてプロモートされていくプロセスや他の研究者との付き合いかたなどを指南する内容の書簡もあります。
語り口がすばらしく、どんどん読み進めることができます。


目次を列挙すると
まえがき

1通め なぜ数学をするのか
2通め わたしが弁護士になりそうになった顛末
3通め 数学は幅が広い
4通め すっかりできあがってしまっているのでは?
5通め 数学に囲まれて
6通め 数学者はどのように考えるか
7通め どうやって数学を学ぶか
8通め 証明の恐怖
9通め すべてコンピュータで解けるのでは?
10通め 数学における物語
11通め いくつかの問題を同時にあれこれいじる
12通め 超大作
13通め 解けない問題
14通め キャリアの梯子
15通め 純粋か応用か?
16通め どこからあんな突拍子もないアイデアがわくのか?
17通め 数学の教え方
18通め 数学者の世界について
19通め まぬけなことをしでかさないために
20通め 協力の喜びと危険と
21通め 神は数学者か
となります。

11通め いくつかの問題を同時にあれこれいじる
では
研究テーマの選び方について語られます。数学の世界でポアンカレ予想を解いたら一気に名声を博すだろうが、普通に考えて大学院生が取り組む問題ではないし、あまりの高い峰を攻めるあまり3年も4年も作業を続けても征服できない場合もある。


だから分別のある、妥協点として、大きな問題に取り組む時間は、使える時間の一部だけにしておいて、残りの時間で、それほど大きくはないが解くことができ価値もある問題に取り組むというのがいいと思う。

これは,生物学研究でも同じ。時間もお金も有限です。

14通め キャリアの梯子
では,学者として育っていく過程での指導教官や周りとの距離の取り方についてが語られる。
DXGS;doctor X's graduate student
PYR: promising young scientist
ER:excellent researcher
SS;senior scientist
GOP; grand old person
EG; emeritus guru
MG; ,marvelick guru
のような分類があるという。

16通め どこからあんな突拍子もないアイデアがわくのか?
では,研究における才能の問題が語られる


研究に必要なのは、同窓生にトンダヅの宇土、考える時間と、仕事ができる場所と、優れた図書館へのアクセスと、優れたコンピュータシステムへのアクセスと,コピー機と、高速インターネット接続。ただし,最初の一つだけは自前だ。

独創性は、持っているか、持っていないかのいずれかで、教え込めるものではない。独創性を育んだり、圧殺したりすることはできるが、「独創性に関する基礎講座」みたいなものが有って、その口座に出て、教科書を読み、試験に受かれば新しいアイデアを生み出せるようになる,というものではない。

なかなか耳の痛い話で。才能が無い者はそもそも学者をになるべきでなく、またそのような選別は大学院入学の時点でおこなうべきなのでしょう。

こんな感じで、理系の人ならどの分野の人が読んでもとってもためになる本です。

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2007年06月30日 23:18に投稿されたエントリのページです。

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