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今週の一押し:2007-#30:”知についての三つの対話”

知についての三つの対話 (ちくま学芸文庫 フ 27-1)

"Nature"に「科学者の敵」といわしめたポール・ファイヤアーベント(参照)の著作が文庫本になりました。
英語のタイトルは"Three dialoues on knowledge"です。プラトンの対話編を意識しているのだと思います。

知とは何か
科学とは何か
知恵とは何か
という三つの対話(という形式をとっているだけで実際の対話ではない,と思う)で構成されています。
古い順では、
科学とは何か(1976年)
知恵とは何か(1989年)
知とは何か(1990年)となっています。

二番目の対話「科学とはなにか」は取っ付きやすいと思います。既存の科学の批判が縦横無尽になされているからです。例えば占星術と癌治療は人間生活への影響を考えれば同列に論じられるのもだというような議論。いわゆる西欧医学が伝統医学といかに違わないかというような議論は、表面的には近代医学への批判としてよく目にするようなことなのだが,ファイヤアーベントの議論からは学ぶべきことが多い。30年前に書かれたということを意識する必要はまったくなく現代でも十分通用する知識、科学論だと思います。とくに「科学とはなにか」の後半部分は、現代医療論になっていてぼくには痛快に読むことができました。ぼくが内科の医者にならずに麻酔科医になった理由の一部もここら辺にあると自分で再認識しました。

プラトンといえば「テアイテトス」という対話編があり(「知とはなにか」は「テアイテトス」を題材にという副題がついています),「知識とは何か」にかんして論じられます。ぼくは岩波のプラトン全集で読みましたが、これまたいくつかの文庫本で出ているようです。
テアイテトス

こんな問題は紀元前から論じられているのですね。
単純に医学は科学だとか医学は科学でないというような議論をしても何の意味もない,というか何の足しにならん訳です。

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2007年08月20日 13:18に投稿されたエントリのページです。

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