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酸素療法の脳への効果と二酸化炭素

PLoS Medicine - Hyperoxic Brain Effects Are Normalized by Addition of CO2

PLOS medicineからです

生体内のすべての細胞は生存に酸素を必要とします。酸素は肺で空気から血液中に吸収される訳ですが健常人においては酸素を21%含む空気を呼吸することで組織を正常に保つ酸素ためには十分でです。しかし組織への酸素運搬を改善する必要がある医学的な状況も存在します。例えば、蘇生後または脳梗塞の後など脳への酸素供給が障害されてい場合、また未熟児は肺が未成熟な故に酸素を十分に効率的に取り込むことができないので、これらの場合、高酸素分圧の気体を肺に供給することで酸素供給を増加させることを試みます。これをhyperoxic ventilationとこの論文では提議します。しかし、逆説的に、hyperoxic ventilationは事態を増悪させる可能性をもつという報告があります。hyperoxic ventilationは肺胞換気量を増大させ血中の二酸化炭素濃度を低下させる。低二酸化炭素血症は血管の収縮をもたらし脳への血流を減少させる。高酸素血症はまた心拍数、血圧やある種のホルモンの血中濃度を変化させる、というスキームです。おそらく脳内で自律神経の調節に関わる領域に何らかの作用を及ぼすのだと考えられています。
このような問題を解決する方法として高酸素濃度ガスに少量の二酸化炭素を加えるという方法が存在します。これにより脳血流が維持されると考えられているのですが、しかし、いままでこのような二酸化炭素の添加が脳内の自律神経の調節中枢における働きは明らかになっていませんでした。
この論文では、functional MRIの技術をボランティア14人(8-15歳つまり小児を用いた研究)を適用した研究成果が報告されています。

空気の吸入に続き、100%酸素または95%酸素+5%二酸化炭素を二分間吸入する。100%酸素吸入では速やかに視床下部と視床下部への投射を領域(島,海馬)でのシグナル増大が観察された。一方95%酸素+5%二酸化炭素の混合ガスの吸入では高酸素血症は起こるもののこれらの領域でシグナルの増大は観察されなかったか、有意に抑制されていた、という結果です。

という訳で、5%二酸化炭素の添加は高酸素血症が引き起こす脳の反応の一部を抑制するという結論に至った、という報告です。

あくまで、健常小児を覚醒下で調べた結果です。

The Journal of the American Society of Anesthesiologists, Inc. - Anesthesiology Fulltext: Volume 106(5) May 2007 p 1051-1055 Hyperoxia-induced Tissue Hypoxia: A Danger?

こんな論文も存在します。高酸素血症の功罪というのは未だ臨床の分野では確定している訳でなく、全身麻酔後という特殊な条件下でどうかということもよく解らんのですね。

それでは全身麻酔後にどれくらいの酸素をどれくらいの時間投与すればいいのでしょうか?

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2007年08月07日 22:11に投稿されたエントリのページです。

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