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医者が増えても解決しない問題

日本経済新聞では日曜の特集Sunday NIKKEI a(alpha)で”医師不足の深層”と題する特集を連載しています。
今週の日曜は医学部の学生募集の”地域枠”を取り上げていました。

以下のような報道と連動しているのでしょうね。
医師不足で国立大3校医学部が県内者推薦の「地域枠」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

北海道、東北地区を中心に軒並み地域枠が導入されています。札幌医科大学は1997年に導入されて以来2006年度では20人の枠が設定されています。詳しい内容はぼくは把握していませんが、地元からの入学者を試験で優遇するというもののようです。これとどういった関係にあるのか分かりませんが、奨学金を貸与し一定期間の地域勤務で貸与金の返済を免除するという制度もあるそうです。
日経の解説ではそのような方策は医師の地域への定着に一定の成果を挙げているとのことです。

この特集では、院内助産所の取り組みやなども紹介されていました。妊娠24 週の時点で医師による診察の結果、リスクが少ない場合、同じ病院内で医師によるお産か、助産婦によるお産かを妊婦が選択できる制度を採用している病院が有るそうです。妊婦にとって助産婦によるお産を選択するインセンティブがどこにあるのかぼくにはよく分かりませんので、何とも云いようがありませんが、制度の概念はよく理解できます。
麻酔看護師制度の導入を考えている人たちの理論的な背景にもこのようなことがあるのでしょうか。リスクの小さい患者さんの小さな手術の麻酔は必ずしも医師がすべて担当する必要がないという考えかたです。しかし患者にとって医師による麻酔でなく看護師による麻酔を選択するインセンティブがどこにあるのかという点は残ります。研修指定病院において研修医による麻酔を拒否する患者さんがいます。そのような人たちを麻酔看護師による麻酔を受けるように誘導することはそんなに簡単なことではないと思います。

最後に東大病院の院長永井氏のコメントが紹介されていました。


日本の病院は、海外に比べ医師を支える看護師などの人数が少ない。医師が医師以外でもできる業務に追われ結果として医師不足になっている

おっしゃるとおりですね。

しかし大学病院(すくなくとも国立大学法人系の病院)で働く医師をとりまく環境は看護師が少しくらい業務を分担してくれたからといって改善されないと思います。
現在私たちの病院では、研修医のローテートは16人/3ヶ月と十分すぎるほどです。一日に一回も麻酔が当たらない研修医もいます。彼らが何人いてくれてもぼくたちは一向に楽になりません。
今年からは後期研修の先生方も加わってくれました。おかげで少し楽になりました。
しかし当直の回数とか日々手術室から研究室に移れる時間などを含んだ環境はまったく改善しません。教員の定員の問題や給与の問題が未解決なままだからです。月曜日から金曜日朝から深夜まで診療にたずさわっても、給与は文学部の先生方とほぼ同じ。
こういった状態は都市部の市中病院においても専門医レベルの麻酔科医にとっては共通の問題であろうかと思います。
少なくともぼくをめぐる状況は、新研修制度の導入前からのことで、この数年で急に悪化したわけではありません。では何が悪いのでしょうか。答えは自分ではわかっていてどうすれば逃れらるかもわかっているような気もしますが...

この一週間で3日も当直です。結構つらいです。

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2006年07月13日 21:14に投稿されたエントリのページです。

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