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2007年08月 アーカイブ

2007年08月01日

”京大M1物語”

メシ屋で”ビッグコミックスピリッツ”読んでいたら”京大M1物語”が始まっていた。(まだwikipediaには載ってない)

どの方向に行くのか予想できんが、京都の町の風情は強調され過ぎの感もあるがよく出ていた。
だいたいあんなもんだろう京大の廻りは。深夜二時くらいに自転車で走っていたら誰にも会わないでアパートに着くこともありますから。

しかし京大の院が高偏差値という記述はいただけません。京大の院など入る気さえあれば入れるのがいいところなのではないのでしょうか。

主人公が、M1がM2となりDをへてODになるまで連載が続くの期待しています。

2007年08月07日

酸素療法の脳への効果と二酸化炭素

PLoS Medicine - Hyperoxic Brain Effects Are Normalized by Addition of CO2

PLOS medicineからです

生体内のすべての細胞は生存に酸素を必要とします。酸素は肺で空気から血液中に吸収される訳ですが健常人においては酸素を21%含む空気を呼吸することで組織を正常に保つ酸素ためには十分でです。しかし組織への酸素運搬を改善する必要がある医学的な状況も存在します。例えば、蘇生後または脳梗塞の後など脳への酸素供給が障害されてい場合、また未熟児は肺が未成熟な故に酸素を十分に効率的に取り込むことができないので、これらの場合、高酸素分圧の気体を肺に供給することで酸素供給を増加させることを試みます。これをhyperoxic ventilationとこの論文では提議します。しかし、逆説的に、hyperoxic ventilationは事態を増悪させる可能性をもつという報告があります。hyperoxic ventilationは肺胞換気量を増大させ血中の二酸化炭素濃度を低下させる。低二酸化炭素血症は血管の収縮をもたらし脳への血流を減少させる。高酸素血症はまた心拍数、血圧やある種のホルモンの血中濃度を変化させる、というスキームです。おそらく脳内で自律神経の調節に関わる領域に何らかの作用を及ぼすのだと考えられています。
このような問題を解決する方法として高酸素濃度ガスに少量の二酸化炭素を加えるという方法が存在します。これにより脳血流が維持されると考えられているのですが、しかし、いままでこのような二酸化炭素の添加が脳内の自律神経の調節中枢における働きは明らかになっていませんでした。
この論文では、functional MRIの技術をボランティア14人(8-15歳つまり小児を用いた研究)を適用した研究成果が報告されています。

空気の吸入に続き、100%酸素または95%酸素+5%二酸化炭素を二分間吸入する。100%酸素吸入では速やかに視床下部と視床下部への投射を領域(島,海馬)でのシグナル増大が観察された。一方95%酸素+5%二酸化炭素の混合ガスの吸入では高酸素血症は起こるもののこれらの領域でシグナルの増大は観察されなかったか、有意に抑制されていた、という結果です。

という訳で、5%二酸化炭素の添加は高酸素血症が引き起こす脳の反応の一部を抑制するという結論に至った、という報告です。

あくまで、健常小児を覚醒下で調べた結果です。

The Journal of the American Society of Anesthesiologists, Inc. - Anesthesiology Fulltext: Volume 106(5) May 2007 p 1051-1055 Hyperoxia-induced Tissue Hypoxia: A Danger?

こんな論文も存在します。高酸素血症の功罪というのは未だ臨床の分野では確定している訳でなく、全身麻酔後という特殊な条件下でどうかということもよく解らんのですね。

それでは全身麻酔後にどれくらいの酸素をどれくらいの時間投与すればいいのでしょうか?

役員の報酬等および職員の給与の水準の公表について

京大広報の625号に
役員の報酬等および職員の給与の水準の公表について
という資料がついています。

この京大広報一応京大の内部広報なのですが、病院では待合室にどんと置いてあるしなによりnet上ではどなたでも自由に読むことができるという代物です。

役員の報酬等および職員の給与の水準の公表について
では職種別に平均年齢、平均給与などが細かく記載されています。
例えば教育職員5級(教授)は京大に932人いて年齢は38-67歳(平均54.2歳)年間給与は18036-8482千円(平均XXXXX千円、あえて隠しておきます)となっています。
驚くのは京大では、教員の中で教授の占める割合が36.4%で実はこれは一番大きな集団となっているということです。ちなみに事務系では部長、課長あわせて70人しかいません。すごい希少価値です。

税金から運営交付金をもらっている以上しかたないのでしょうが、こんなもの公表されて恥ずかしいです。大学の教員になりたいと思う若い人が減ると困ります。

詳しくは以下のリンクから
京大広報

2007年08月08日

.Mac

アップル の.Mac、一気に10GBになってますね。


今週の一押し2007 #28;"99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方"

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方

2006年に出版された本です。
”科学”とはどんな学問なのかを考える手がかりになるよい入門書です。

高校生にも理解できる単純なことですが、大学院生でも完全利理解している人は少ないしおそらく大学教授でも理解してそう行動しているひとは少ない、と思います。
自分の信念を熱く語るのが科学者だと思っている人は意外と多いものです。自分も気をつけないとどこで人に嗤われているかわかりません。

以前に読んだのですが昨日iTunes版つまり朗読されたものが出ているのを知りました。
900円です。これはいいです。iPODに入れて、電車に乗っている間に一冊聴く(といっても二時間半)ことになります。朗読は言語明瞭で速度も適当、おそらくメモをとって聴き進むことも可能と思います。

iTunes Music Storeでポチッと買えます。本もいいけどこっちをお薦めします。

eNOSとaneurysm

Cerebral Aneurysm Formation in Nitric Oxide Synthase-3 Knockout Mice:: Current Neurovascular Research Home Page
なんかちょっと頼りないような気もしますが、人でもそうなら結構な発見か

喫煙はなぜ悪いのか

PLoS ONE: A Novel Role for Connexin Hemichannel in Oxidative Stress and Smoking-Induced Cell Injury

PLoS Oneから

喫煙がischemia, atherosclerosis やneurodegenerative disorderなどを含む病的な状態を作り出す原因の一つであるという説がありさまざまな学者がそのメカニズムの研究をしています。
その中に喫煙が酸化ストレスを細胞に負荷することにより病的変化への引き金が引かれるという学説があります。
この論文は、喫煙がいかにして細胞にとっての酸化ストレスたり得るのかの分子機構の一つを報告しています。
タバコの抽出物とくに過酸化水素がヘミチャネルを開いて細胞外の酸化ストレスを惹起する分子が細胞内に流入し細胞死に至る経路を明らかにしたと主張しています。

なんかこれは面白そうです。いろんな実験が考えられますね。

2007年08月09日

Numbers'08

アップル - iWork
アップル社のiWork'08が発売になっています。

生協に買いに行く時間がないので、trial版をインストールしてみました。

Numbersというスプレッドシートのアプリケーションが良さそうです。
普段はしょうがなく、Excelを使っていますが、研究で使う文にはそんなに強力な機能はいらないので見栄え、使い勝手がよければいいのでNumbersはぴったりのような気がします。


2007年08月13日

reductive stress

Human αB-Crystallin Mutation Causes Oxido-Reductive Stress and Protein Aggregation Cardiomyopathy in Mice Cell -- Rajasekaran et al.
oxidative stress(酸化ストレス)がさまざまな疾患の病態生理学で重要な役割を果たしているというドグマがあります。
今回は、還元ストレスもあるよという報告です。


2007年08月14日

肺炎と敗血症のサイトカイン反応の多様性

Arch Intern Med -- Understanding the Inflammatory Cytokine Response in Pneumonia and Sepsis: Results of the Genetic and Inflammatory Markers of Sepsis (GenIMS) Study, Aug 13/27, 2007, Kellum et al. 167 (15): 1655

Archives of Internal Medicineから
GenIMS(Genetic and Inflammatory Markers of Sepsis) studyからの報告です。

bodyhacking::blog - paper of the week#32

で要約しておきましたが、とても重要な論文なので自分で読むことをおすすめします。

2007年08月16日

今週の一押し2007 #29;"身体をめぐるレッスン"

五山の送り火も終わりました。ちょっとは涼しくなってくれるとよいのですが,当分無理そうです。
以前住んでいた銀閣寺近くのアパートや今の職場からは普段でも「大」の字がよく見えるのですが、点火されるとさらに大きく見えて毎年びっくりします。
今年は家でNHKの中継を見ました。

身体をめぐるレッスン 3 (3)


岩波書店の”身体をめぐるレッスン”という4冊の単行本で構成される講座の一冊です。
波打つ身体(Material)という副題がついています。

図書館に目的の本を借りに出かけたのですが,既に借りられていて、入手に失敗。かわりに新規購入のコーナーでこの本を見つけました。

タイトルのまんまの様々な視点からの身体論集です。

「身体はなぜ抗うつ薬を食べ続けるのか」などの刺激的なタイトルの論文も収録されています。

紹介するのは「<動くこと>として<見ること>-身体化された看護実践の知」です。
医療現場では、医学的なマニュアル的な知識をもっていてもいざ患者を相手にしたときにその知識を有機的に生かして事に当たることができない場合があります。一年もすれば自ずと身に付いてくるというか会得できる実践的な経験もありますが,もっと長い期間をかけてでないと会得できない知恵のようなものもあります。こういったことは,教科書に記述するのが難しく,指導者から直接伝授される得るようなものでもない。だからといって、経験を積むことで習慣化される行為という訳でなく,自分自身が専門家になる過程で、会得し、意識的に過去の経験と今目の前にある実例との差を検出しながら日々更新していくようなものであると思います。
この一文では,看護師への聞き取りをまとめていくことで上にまとめたような問題を考えています。
機会があればみなが読んだらいいと思います。

初期研修というのも本来は、このような臨床知の会得法を学んでいくのが目標なのだと思います。

「複素的身体論ー無敵の探求」もなかなか考えることの多い論考です。無敵というのは医療の究極の目標だと思います。

2007年08月20日

卒論の代筆!?

1文字5円、卒論に代行業者…大学は「見つけたら除籍」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

このうち、昨年4月から事業を始めた業者が読売新聞の取材に応じた。これまでに300件近い問い合わせを受け、実際に100件以上を請け負ったという。2万字程度のリポートで10万円、発表会のための個別指導を含む卒論執筆だと35万円からという料金設定にしている。

結構いいお金になるのですね。
科学論文で著者が複数の場合、第一著者が必ずしも論文の最終段階である執筆を仕切った訳でない場合もありますが,これはそういったことを言っているのではないのでしょうね。
大学の卒論ってどんなものかわからないのですが,一ヶ月に4っつ仕事が舞い込めば十分生活できますね。

雑誌”実験医学”9月号

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雑誌”実験医学”の9月号の特集は"微小環境からみる新たな癌の姿 癌の低酸素バイオロジー"です。
”がんとハイポキシア研究会”はこのようなテーマを皆で議論する研究会です。

今週の一押し:2007-#30:”知についての三つの対話”

知についての三つの対話 (ちくま学芸文庫 フ 27-1)

"Nature"に「科学者の敵」といわしめたポール・ファイヤアーベント(参照)の著作が文庫本になりました。
英語のタイトルは"Three dialoues on knowledge"です。プラトンの対話編を意識しているのだと思います。

知とは何か
科学とは何か
知恵とは何か
という三つの対話(という形式をとっているだけで実際の対話ではない,と思う)で構成されています。
古い順では、
科学とは何か(1976年)
知恵とは何か(1989年)
知とは何か(1990年)となっています。

二番目の対話「科学とはなにか」は取っ付きやすいと思います。既存の科学の批判が縦横無尽になされているからです。例えば占星術と癌治療は人間生活への影響を考えれば同列に論じられるのもだというような議論。いわゆる西欧医学が伝統医学といかに違わないかというような議論は、表面的には近代医学への批判としてよく目にするようなことなのだが,ファイヤアーベントの議論からは学ぶべきことが多い。30年前に書かれたということを意識する必要はまったくなく現代でも十分通用する知識、科学論だと思います。とくに「科学とはなにか」の後半部分は、現代医療論になっていてぼくには痛快に読むことができました。ぼくが内科の医者にならずに麻酔科医になった理由の一部もここら辺にあると自分で再認識しました。

プラトンといえば「テアイテトス」という対話編があり(「知とはなにか」は「テアイテトス」を題材にという副題がついています),「知識とは何か」にかんして論じられます。ぼくは岩波のプラトン全集で読みましたが、これまたいくつかの文庫本で出ているようです。
テアイテトス

こんな問題は紀元前から論じられているのですね。
単純に医学は科学だとか医学は科学でないというような議論をしても何の意味もない,というか何の足しにならん訳です。

2007年08月21日

"Mailplane"の紹介

e-mailはほとんどgmailで処理していますが、browserから処理をしないと行けないので少し不便なこともあります。また添付文書の処理も特別でfileをそのまま編集窓にドラッグするという直感的な方法が使えないというのも不満といえば不満でした。

Mailplaneはこんなgmailの不満を解消してくれる便利なツールになりそうです。
installして起動するときにgmailのアカウント情報を入力するだけで、browserを立ち上げる必要なしにgmailの環境がwindowに現れます。
読み書きした内容は、browserで開いたgmailに反映されます。
これはいいです。しばらく使ってみようと思っています。

Mailplane - Home

2007年08月24日

呼気CO濃度は吸入酸素分圧に影響を受ける

Exhaled Carbon Monoxide Levels Change in Relation to Inspired Oxygen Fraction During General Anesthesia -- Adachi et al. 105 (3): 696 -- Anesthesia

出てました。

これは実は結構重要な研究です。

続きはこちらで

”幽体離脱”は錯覚なのか!?

幽体離脱と訳すとおどろおどろしいのですがいわゆるout-of-body experienceというのは臨死体験とセットとなっている例のやつです。
これは何も臨死とならなくとも実験的に簡単に誘導することのできるのだそうです。
一種の錯覚という訳ですが、これが臨死体験の一つや幽体離脱と一緒の現象かどうかはわかりません。


PSYCHOLOGY: Out-of-Body Experiences Enter the Laboratory -- Miller 317 (5841): 1020a -- Science

The Experimental Induction of Out-of-Body Experiences -- Ehrsson 317 (5841): 1048 -- Science

Video Ergo Sum: Manipulating Bodily Self-Consciousness -- Lenggenhager et al. 317 (5841): 1096 -- Science

2007年08月25日

キャンパス内レストラン

金曜日お昼御飯を時計台下のレストラン(La Tourという身もふたもない単純明快な名前がついていますが-参照-)で恩師と恩師のつとめている会社の人と戴きました。
存在は以前から知っていましたが、実際に食べたのは初めてでした。
ランチだったのですが,結構本格的だとは思いました。
結構繁盛していました。

ぼくらの同窓会の施設内にも結構立派なレストランがあります。
ああいったレストランが学内にあると何かと便利なのだろうなと思いました。

ほかの大学ってどうなのだろうとちょっと調べたら、東大にも同じ経営主体のレストランが駒場のキャンパスにあるようです。(参照
でもさすがに東大ですね。キャンパス内のレストランやコンビニの一覧地図をネットから見ることができます。

時計台もいまや立派な観光名所になっているのですね。これにはびっくり。
ゆえあって4時間ほど京大のキャンパス周辺をうろうろしていたのですが、大学の建物が新しくなっているのを多数発見してこれまたびっくり。恩師とぼくは入学が30年ほど違うのですが「俺の時代にはあれはなかったとか、ぼくのじだいにはあったとか」話しながら,観光客のように歩き回りこれはこれで疲れました。たまに大学内を散策するのもよいものです。

2007年08月29日

移植後にHCV freeにする

Clearance of hepatitis C virus after living-donor liver transplantation in spite of residual viremia on end date of interferon therapy before transplantation:World J Gastroenterol

これってすごいと思いますけど、どれだけ一般的または特殊なやり方なのでしょうか。

2007年08月30日

燃え尽きそう

いつも弱音をはいている自分ですが、ここ10日くらいはホントにしんどいです。

自分にとってあまり重要でないことには締め切りなどがあるのですが、逆に重要なことには明確な締め切りが無い故に少しづつ遅れていくという、解決が困難な問題があります。

迷惑をかけている皆さん許してください。

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