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2006年07月 アーカイブ

2006年07月02日

movable typeのアップグレードにともない..

movable typeのアップグレードに伴いdatabaseなどの入れ替えを行いました。
今までのentryは

http://www.hif1.net/res-hypoxia_archive/

で読むことができます。

師に会う

ぼくにも、頭の上がらない先生が何人かいます。
とくに研修期間(当時は、”研修医”ではありませんでしたが)にお世話になった二人の先生方の云うことは条件反射的に聴いていました。一人の先生には同門会その他でお会いすることが多いのですが、もう一人の先生には、あまり会う機会が多くなかったのですが、昨日の同門の集まりで久しぶりに話をする機会がありました。
現在のぼくの麻酔の基本形が初めの4年間で作られました。。一見型にはまっているように見えても毎日毎日麻酔をし続けて勉強もかなりしました。以前書いたことがあるかも知れませんが、多分自分の背丈よりおおくの書籍、文献を読んだことは間違いないと思います。
初めの4年でぼくの麻酔の基本が作られその以後は大した進歩はしていないような気がします。

今週の一押し26:""生きていることの科学"

生きていることの科学

第二章オープンリミット-点のなかの点
で語られるオープンリミットという考え方は医療にも応用可能だと思います。
講談社現代新書の一冊ですが、かなり難しいと感じられるかも知れません。
その意味で、ぼくが”誤解”をしている可能性もあります。

ついでに
ほんじょの鉛筆日和。
も紹介しておきます。
本上さんは、なんと原稿用紙を使って書いているそうです。英語が不得意とかいろんな新事実満載。

ほんじょの眼鏡日和。
も今度立ち読みしよっと

研究費の不正使用

内部告発に端を発する早稲田大学教授の科学研究費の不正使用問題ですが、ここに来て論文の捏造問題も出てきてかつて無いほどの重大な事件に発展していく気配になっています。
柳田先生がうまく一連の出来事をまとめておられます。
柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida : 白昼堂々の早稲田大学教授

東大の事件、阪大の事件でも結局当事者の処分は決定していないか、かなり軽微なものだったのですが少なくとも研究費の不正受給という問題は出ませんでした。その意味では、研究者の倫理的な側面に焦点を合わせた議論が多かったかも知れません。今回は、研究を投資信託にしていたとかの事実も出ていて、この点だけを取り上げれば刑事事件に発展するかも知れませし、そうなれば教授職を含む公職の辞任だけでは決着しないかも知れません。

大学の研究室以外に研究室を持ちまた自分が株式を相当する保有するベンチャー企業を立ち上げ、公的な資金を共同で使っているような研究者は危険だと思います。
公的な資金をベンチャーに入れることで一種のmoney launderingを行うことができます。大学のお金で祇園のお茶や遊びをするのは多分問題でしょう。でも一私企業のお金で何をしようが株主(つまり自分)が納得すれば問題はすくないでしょう。資金は捏造すれすれの研究で稼げばいいわけです。このような事例はぼくの体験からしてもいくらでもあります。
政府が本気でやるならこういった事例を総ざらいすべきでしょう。

これは実は研究費の使い方の問題でなく、配分の問題なのだと思います。

能力のないもの、成果のない研究者が巨額な研究費を手にすること自体が「不正」であると、国や公共機関は、つまり納税者は認識する必要があります。

巨額でなくとも10万円でも、成果の無い研究者に研究費を配分する必要はまったくありません。研究者は、学部生ー大学院生ーポスドクー若手研究者ー研究者とステップを踏んで行くわけですが、その段階ごとにある種の淘汰を受けるはずです。若手研究者には別の評価システムを用意すればいいのです。その段階で”能力”もあるていど明らかになると思います。
研究の評価にも以前紹介したh-indexの様な客観的な指標と内容に踏み込んだ専門的な評価の二本立てにすべきだと思います。

原稿用紙一枚程度の申請書など誰にでもかけます。そもそも本人が書いている保証さえないのです。なので今までの研究成果に基づき、またpreliminary dataを盛り込んだ米国式のまっとうな審査システムに変えていくことが必要だと思います。
money laundering(マネーロンダリング)を調べていたらYahoo!辞書 - 学歴ロンダリングという言葉があるのを知りました。びっくりしました。ぼくはこれは困ったものだと思います。

2006年07月04日

何で?

山形大医学部研究チーム、学会誌論文でデータねつ造 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

いろんな意味で面妖な報道です。
皆さんもいろんな疑問を抱くと思います。
たとえば
-なぜ”麻酔”の論文がこのようなnewsになるのか
-なぜ今ごろ唐突にこのような報道がなされるのか
-誰が得をして誰が損をするのか

それはさて置き、このような誰も引用しないような論文ほど捏造の温床となっているのかも知れません。多くの人の目に触れる論文は追試をする人もいるだろうし、その結果、おのずと真偽が明らかになっていきます。多くの研究者をその領域の研究に呼び込むことにより、その報告自体が誤りを含んでいても弁証法的な発展を遂げる場合もあります。一方、”麻酔”のような雑誌に日本語で掲載された論文は人目に触れることも少なく、追試を試みる研究者も少ないでしょう。このような論文で不正な操作が行われていても発覚することは少ないと思います。規模の小さい臨床研究など、一種の一例報告とも言えます。

ともかくこのような報道がなされた以上、学会も何らかの調査を始めるのでしょうか。
麻酔科学会は先の学会で、論文の捏造を認めた研究者を招待講演者として招聘ししゃべらせたという過去をもちます。今回、学会として何もしなければ日本麻酔科学会は研究上の不正行為に寛容な学会ということになってしまいます。

しかし何で麻酔に投稿するような論文で捏造などするのでしょうか。
学位などが関わっているのでしょうか。そうだとしたらそれはそれで悲劇的な話です。

2006年07月06日

専門修練医(後期研修)選択のためのポスターセッション@京大病院

専門修練医(後期研修)選択のためのポスターセッション
明日こんなものが催されます。
京大病院の麻酔科で働きたい先生方は参加してください。
ぼくもでます。
ビデオ撮影、デジカメ撮影、記念撮影大歓迎です。

今週の一押し 番外:"意識の探求―神経科学からのアプローチ"

意識の探求―神経科学からのアプローチ (上)
意識の探求―神経科学からのアプローチ (下)

はChristof Kock博士の

The Quest for Consciousness: A Neurobiological Approach

の翻訳です。
ぼくは以前この英語の本を読み始めて途中で挫折したという過去をもちます。
今回、清水の舞台から飛び降りる覚悟で翻訳を6000円以上も出し買いました。

これは素晴らしい本です。
内容が良いことに加えて翻訳がすばらしい。
まだ半分しか読み進めていないのですが、およそ”意識”を意識して商売をしている麻酔科医がこの本を読まずして”意識”を語るなどナンセンスでは無いかと思います。
是非買って読んでください。

きのこ

京都大学には京大広報という学内向け広報誌があって用もないのに毎月机の上に配られてきます。
入学式、卒業式での学長の式辞などが載ってたりするのですがたいていは読んだ時間が無駄になるようなどうでもよい内容が満載です。
そんな広報ですがたまには面白い記事というか随筆風な文章もあります。
今月号(NO.613)で言えば"きのこの生える京大を”でしょうか。
永田さんがきのこ好きだったとは知りませんでした。


今回の広報には、入学試験の結果が出ているのだが、見てみると驚く。
医学部医学科の前期試験は1300点満点であったのだが、合格者の最高点は1062.85点で最低点は909.43点であったとのこと。こんな僅差にひしめいているなんてすごい。

2006年07月07日

ポスターセッション行われました

専門修練医(後期研修)選択のためのポスターセッション@京大病院 (hypoxia research::blog)
で紹介した催しですが、遠くから来てくれた懐かしい顔にであえたたのはよかったのですが全体としては少し滑った様な気もします。
麻酔科のポスターの前で異常に鋭い質問をしていたのが5回の学生さんだったりしてびっくりしました。
とにかく興味のある先生方は連絡ください。

2006年07月09日

今週の一押し27:"輝く日の宮"

輝く日の宮
丸谷才一氏の小説が、文庫本になりました。

”輝く日の宮"というタイトルは、源氏物語の失われたと言われている一帖の名前です。この小説のストーリーで重要な役割を果たしています。
主人公は若く(たぶん)美人の国文学者。
進行にあわせて小説内に”小説”や”物語”がうまく配置されているなど章ごとに趣向が凝らされています。

”芭蕉はなぜ東北に行ったか”に関する諸説が学会での発表というような形で語られまた学会や他の国文学者への批判も批判的に語られ文系の学会のノリもかいま見ることができます。これが結構おもしろいのですが真偽の程はぼくには不明です。

これ一冊読むと急遽勉強を始めたくなるような一冊。
3年前に定価1890円で出ていましたが文庫本は770円。
アマゾンで古本を買えば99円+送料です。
必ず楽しめると思います。

2006年07月13日

医者が増えても解決しない問題

日本経済新聞では日曜の特集Sunday NIKKEI a(alpha)で”医師不足の深層”と題する特集を連載しています。
今週の日曜は医学部の学生募集の”地域枠”を取り上げていました。

以下のような報道と連動しているのでしょうね。
医師不足で国立大3校医学部が県内者推薦の「地域枠」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

北海道、東北地区を中心に軒並み地域枠が導入されています。札幌医科大学は1997年に導入されて以来2006年度では20人の枠が設定されています。詳しい内容はぼくは把握していませんが、地元からの入学者を試験で優遇するというもののようです。これとどういった関係にあるのか分かりませんが、奨学金を貸与し一定期間の地域勤務で貸与金の返済を免除するという制度もあるそうです。
日経の解説ではそのような方策は医師の地域への定着に一定の成果を挙げているとのことです。

この特集では、院内助産所の取り組みやなども紹介されていました。妊娠24 週の時点で医師による診察の結果、リスクが少ない場合、同じ病院内で医師によるお産か、助産婦によるお産かを妊婦が選択できる制度を採用している病院が有るそうです。妊婦にとって助産婦によるお産を選択するインセンティブがどこにあるのかぼくにはよく分かりませんので、何とも云いようがありませんが、制度の概念はよく理解できます。
麻酔看護師制度の導入を考えている人たちの理論的な背景にもこのようなことがあるのでしょうか。リスクの小さい患者さんの小さな手術の麻酔は必ずしも医師がすべて担当する必要がないという考えかたです。しかし患者にとって医師による麻酔でなく看護師による麻酔を選択するインセンティブがどこにあるのかという点は残ります。研修指定病院において研修医による麻酔を拒否する患者さんがいます。そのような人たちを麻酔看護師による麻酔を受けるように誘導することはそんなに簡単なことではないと思います。

最後に東大病院の院長永井氏のコメントが紹介されていました。


日本の病院は、海外に比べ医師を支える看護師などの人数が少ない。医師が医師以外でもできる業務に追われ結果として医師不足になっている

おっしゃるとおりですね。

しかし大学病院(すくなくとも国立大学法人系の病院)で働く医師をとりまく環境は看護師が少しくらい業務を分担してくれたからといって改善されないと思います。
現在私たちの病院では、研修医のローテートは16人/3ヶ月と十分すぎるほどです。一日に一回も麻酔が当たらない研修医もいます。彼らが何人いてくれてもぼくたちは一向に楽になりません。
今年からは後期研修の先生方も加わってくれました。おかげで少し楽になりました。
しかし当直の回数とか日々手術室から研究室に移れる時間などを含んだ環境はまったく改善しません。教員の定員の問題や給与の問題が未解決なままだからです。月曜日から金曜日朝から深夜まで診療にたずさわっても、給与は文学部の先生方とほぼ同じ。
こういった状態は都市部の市中病院においても専門医レベルの麻酔科医にとっては共通の問題であろうかと思います。
少なくともぼくをめぐる状況は、新研修制度の導入前からのことで、この数年で急に悪化したわけではありません。では何が悪いのでしょうか。答えは自分ではわかっていてどうすれば逃れらるかもわかっているような気もしますが...

この一週間で3日も当直です。結構つらいです。

"翻訳教室"

翻訳教室
東京大学の柴田元幸先生の実際の授業(文学部の翻訳演習)を収録した本です。
なかなか楽しい本で文学部の学生でないぼくでも十分楽しめます。
授業に、村上春樹氏やJay Rubin氏などが飛び入りで参加したりしてウケを狙っているキライはありますが、為になる授業であることには変わりはないと思います。

医学部ではなかなかこのようなタイプの授業はできませんね。心臓麻酔の授業をしていていきなり”スーパードクターK”が登場してK語録を披露しても雰囲気が寒くなるだけで全く意味がないですから。
それにしてもTV局もあまりいい加減な番組を流しているとそのうち患者さんに間違った風評を流したということで訴えられる可能性もあるので気をつけた方がいいと思いますよ。

途中で全然違う話になってしまいましたが、とにかく、”翻訳教室”はよい本ですよ。
図書館で借りたのですが、返却期限をすでに二週間も過ぎています。日本はいいですよ。期限に遅れてもお金を取られるわけでないので。これがアメリカなら大変です。よく本を図書館で借りていたのですがついうっかり返却期限を過ぎると返却の時、”チン”とか音がしてしっかりお金を取られました。結局その本のpaperbackが買えるくらいとられて借りた意味が無くなることがありました。日本もそうしたらいいと思いますよ。借りたい本があってもぜんせん帰ってきませんから..
というわけでまたまた脱線してしまいました。

Would You Be Happier If You Were Richer?

Would You Be Happier If You Were Richer? A Focusing Illusion -- Kahneman et al. 312 (5782): 1908 -- Science
お金持ちは幸せだというような命題が真であると思っている人は多くはないとおもいますが、今よりもう少しお金が有ればよいなと思っている人は多いと思います。
このScienceの論文は、こんな問題に取り組んでいます。
結果を知りたい人は自分で読んでみてください。


2006年07月14日

真意が不明

大学研究費不正受給、申告すれば罰則軽減…文科省検討 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
内部告発が殺到して困っているのだろうか。
適当なところで”徳政令”を引いてまとめて禊としようと考えているのでは..

2006年07月15日

"Fake Data, but Could the Idea Still Be Right?"

科学において、ある主張が、それを証明する過程で不正があったとしてもそれとは無関係に真である場合もあるし偽である場合もあります。
今週号の雑誌Scienceでこんな問題が論じられています。
CANCER RESEARCH: Fake Data, but Could the Idea Still Be Right? -- Couzin 313 (5784): 154 -- Science
ノルウェイ人のガン研究者であるJon Sudbø博士がLancetやNew England Journal of Medicineその他に発表した論文のほとんどはかれが作為的に作ったdataを含んでいることが明らかになり論文のリトラクトなどが行われました。
(この経緯は、wikipediaに詳しく説明されています。Jon Sudbø - Wikipedia, the free encyclopedia
彼の論文は、彼が作為的につくったデータを多く含むため、彼の主張の真偽は決定できない道理です。しかしかれが論文で提唱した概念は口腔ガンの研究者にとってあまりに魅力的なものであるがゆえに、現在その真偽を確かめる研究が行われているというのです。
どんな空想であっても、空想の真偽を確かめることはできる場合がありますーもちろん確かめることが現在の科学の水準ではできない場合もありますー。ある時代に不正に提唱された概念も後の時代の検証により考え自体は正しいーしかしその当時にはそれは証明できなかったはずであるーという評価を下される場合があります。メンデルのエンドウ豆の研究も、ガリレオの振り子の等時性の発見も、現在の検討からは彼らが当時の科学の水準でその発見ができたのかに関しては疑問が提示されているそうです。しかしそれとは無関係にメンデルの”発見”した法則は独り歩きをして現在の遺伝学の構築に大きな貢献をしました。
だからといって一部の天才は捏造をしてもよいのだということにはなるわけは無いのであって現実の世界ではいろんな問題が生じてきます。
自分の治療や診断法または理論に自信を持っている人は手続きを無視して結論の正当性を主張したくなるのでしょうか。
自分の開発した術式を広めると称して病院運営を壟断しようとしている”スーパードクター”もいます。困ったものです。

2006年07月17日

あと30分

当直あと30分でお終い。
結局働いたな、また。

2006年07月18日

今週の一押し28:"「個」を見つめるダイアローグ"

「個」を見つめるダイアローグ

図書館で偶然発見。
村上龍氏と伊藤穰一氏の対談です。
合理的に社会の諸事を考える事のできる知性を持ち、自分の信じるところに従い行動するべきであるとという村上龍氏の従来の主張が、伊藤氏との対談の形式で語られるという本。
特に経済的な合理性が強調されるわけですが、医療問題でも経済的な側面を無視した精神論ではどうもできない問題が山積しているので重要だと思います。
特に目新しい考えが述べられているわけではないのですが、村上氏と伊藤氏の語り口によるのでしょうか説得力のある議論が展開されています。
読んで損はないと思います。

比較的新しい
人生における成功者の定義と条件
でもそうですが村上氏は対談がとびきりうまいと思います。
もう20年位前もトーク番組やっていましたよね。

調べたら今もテレビ東京でやっているみたいです。見てないけど。

江橋節郎氏が死去

筋肉収縮メカニズムを解明、生理学の江橋節郎氏が死去 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
日本経済新聞でも扱いは小さかったです。
残念です。

霧の如意ケ岳

060718_%E5%A4%A7%E6%96%87%E5%AD%97.JPG
まだまだ梅雨は明けていないようです。

レントゲンを撮らなくても残留ガーゼの有無がわかるシステム

Arch Surg -- Abstract: Initial Clinical Evaluation of a Handheld Device for Detecting Retained Surgical Gauze Sponges Using Radiofrequency Identification Technology, July 2006, Macario et al. 141 (7): 659
いつも考えていたことが現実になりました。
ガーゼに鉛の代わりにradiofrequency identification (RFID) chipを仕込んでおくと体外からでもhandheld deviceで信号を検出することによりガーゼの残留の有無がわかるというシステム。
値段は高そうですが、便利は便利。

バフェット氏の寄付

On Off and Beyond: ウォーレンバフェットがビルゲイツに3兆円託して世界が変わる
バフェット氏の寄付ってやっぱりすごいことになるのですね。
医学研究の世界では、あのハワード・ヒューズ氏やソーク氏の寄付によるものが有名で、成果も上がっています。
ハワード・ヒューズ - Wikipedia
Howard Hughes Medical Institute | Biomedical Research

2006年07月20日

"Tracking the recovery of consciousness from coma"

Tracking the recovery of consciousness from coma -- Laureys et al. 116 (7): 1823 -- Journal of Clinical Investigation
植物状態または”最小意識状態”(minimally conscious state)から患者さんが回復して意識を取り戻す可能性を正確に知ることができたら臨床の現場では非常に役に立つでしょう。

この論文は、著者らは、そのようなことがMRIやPETを用いた検査結果を解析することにより可能になるかもしれないという主張をしています。
交通事故による脳損傷(diffuse axonal injury)により昏睡状態に陥り19年後に意識を取り戻した患者と、MCS状態から結果として回復しなかった患者、また健常者の主としてMRIによる画像を解析することにより脳の解剖学的、機能的な再生の兆候をとらえることによりMCSからの回復の可能性を予言できるのではないかと推論しています。
面白いです。
JCIの論文はどなたにでも読むことができます。

2006年07月21日

NOが細胞内貯蔵庫から出てくる

Calcium-dependent release of NO from intracellular S-nitrosothiols
これはすごい話だな。
びっくりしました。

2006年07月23日

今週の一押し29:"一瞬の夏”

一瞬の夏 (上)

日本経済新聞の土曜日の夕刊では、”文学周遊”という連載が続いています。
この前の土曜日は。沢木耕太郎
氏の”一瞬の夏”が取り上げられていました。
カシアス内藤という名のプロボクサーのルポルタージュです。
この本は、新潮文庫に入っていてー上下二冊になっていますー、ぼくは、”新潮文庫の100冊”が収録されたCD-ROMに入っていたのを米国にいるときに読んだというわけです。(ぼくが保っているCD-ROMに収録された新潮文庫のラインアップは100 books of Shincho-bunkoから見ることができます。米国にいて日本語で小説を読もうにも大正が少なかったので新潮文庫の100冊をかたっぱなしから読んでいました。これは凄く良い体験でした。)

この”一瞬の夏”はだれが読んでも興味をたもったまま最後まで読み切れるルポだと思います。”私ルポルタージュの記念碑的作品”と言われるだけあって登場する関係者とくに沢木氏自身のカシアス内藤への関わりが描かれています。というよりこれは沢木氏の精神の移ろいを描いたルポなのです。
ノンフィクションですが”結末”はどうなるんだというような興味もある、様々な教訓を学ぶという体験もする、また結局は読者自身の私事をふりかえらせるという効果をもった得意なルポになっていると思います。

文庫本の解説は柳田邦男氏が書いていたと思います。ー手元に本がないので定かでないですー
彼にも自らの体験を書きつづった壮絶なルポルタージュがあります。

犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日

2006年07月24日

こんなの出てます

Extracellular Signal-Regulated Kinases Trigger Isoflurane Preconditioning Concomitant with Upregulation of Hypoxia-Inducible Factor-1{alpha} and Vascular Endothelial Growth Factor Expression in Rats -- Wang et al. 103 (2): 281 -- Anesthesia

こんなの出てます。data がpoorできちんと批判できませんけどぼくらは以前に
こんなのとか
Reversible inhibition of hypoxia-inducible factor 1 activation by exposure of hypoxic cells to the volatile anesthetic halothane.
こんなの
The volatile anesthetics halothane and isoflurane differentially modulate proinflammatory cytokine-induced p38 mitogen-activated protein kinase activation.

も出しています。

2006年07月25日

健康科学専攻を開設@京大医学研究科

Yahoo!ニュース - 京都新聞 - 健康科学専攻を開設 京大医学研究科 来春に

素晴らしいんでないかい

京都大学病院麻酔科入局説明会は9/3

京都大学附属病院麻酔科の入局説明会の第一段は2006年9月3日の日曜日に行います。

当日は京大病院の専門修練医の説明会が病院の第一臨床講堂で病院主催で開かれます。
その説明会の後に麻酔科独自の説明会を開きます。
麻酔科のスタッフ、現在研修を行っている修練医の先生方にも参加していただく予定です。
追って詳しい予定をお伝えしていきます。
京大への入局をお考えの先生方にはぜひ参加していただきたいと思います。

病院主催の説明会に関しては
医科専門修練医募集 - 京大病院総合臨床教育・研修センターで詳細を確認していただけます。

2006年07月27日

だから無理だって

診療報酬:医師の技量で格差 「競争原理」検討へ−−中医協−医療:MSN毎日インタラクティブ
今でもこれからも”治療成績”を客観的に評価することなんてできないだろう。
スーパードクターはなんとしても自らのスーパー性を証明するように行動するだろうな。

2006年07月29日

評論家が要るだろう

日本経済新聞の木曜日の文化欄の”入門講座”という連載が走っています。
ここ4週は音楽評論家(という肩書きがもっともそぐうのでしょうが)の渋谷陽一氏の”時代を駆けるロック”という音楽家評論でした。
一回目を読みのがしたのですが、二回目からは、ローリングストーンズ、エミネム、そして最終回はブルーススプリングスティーンという渋谷さん好みのラインナップでした。(第一回はやはりビートルズか。だれか教えてください)

渋谷さんは約30年前からNHK FMでロック番組をやっていてぼくは30年来からの放送を聞き続けて来たと云うことがあります。現在も、毎週金曜日23:00からは彼の時間です。運良く(または悪く)この時間にアパートにいればラヂオしかもっていないので必ず聴いてます。雑誌ロッキングオンも毎月購読していたのでが大学卒業時にまとめて友達にあげてしまいました。

彼の真骨頂は


批評性は頑固なロック・ファンに片寄らず、商業性、ポピュラリティーも視野に入れた独特なもの。(wikipedia)

だと思います。
ブルーススプリングスティーンを題材にした今回の文章にもこの渋谷節がかなり薄まってはいるがはっきりと出ていると思います。
彼のページ(渋谷陽一の部屋)でやはり日経で彼が執筆したコンサート評を読むことができます。宇多田ヒカル、矢井田瞳の評論に彼の30年間まったく変わらないスタンスを読み取るとることができます。ここら辺に中村とうよう氏の”ミュージック・マガジン”が廃刊となったのにロッキング・オンが現在隆盛を極めている答えがあると思います。吉田秀和という音楽評論家がいます-彼もNHK FMで長らく番組を持っていました。彼もまたたくさんの著作を生み出していて全集も出ています-。渋谷さんはポップ音楽の吉田秀和だと思います。
というような事が云いたいのではなく、学問の世界にもanother"渋谷さん”が必要なのではないかと言うことが言いたいのです。
今の麻酔科ならやっぱり諏訪先生でしょうか。

くるりのインタビュー今日全部立ち読みしましたけどかなりタメになりましたね。昨日偶然くるりのライブスペースシャワーTVで見たしね。

院生へのずさんな指導

asahi.com:うどん屋巡りで授業遅刻 香川大、教授を停職処分-社会
ぼくも大学院の教員ですが、麻酔をしていてずさんな指導を行っているとかいわれて停職になったら...

Krispy Kremeのドーナッツ

Krispy Kremeが日本上陸だそうである。
ドーナツ戦争勃発…ユニクロ前社長殴り込み
揚げたてのKrispy Kreme Doughnutsは結構いけます。アメリカにいる二年半毎週一回食べてましたから。laboratory meetingのおやつがこのDoughnuts.
でもミスドに勝てるかな..
バーガーキングもいつの間にか無くなったし。うちは一家でBurger Kingのfunだったんですよ。

「ねつ造なかった」!?

「ねつ造なかった」松本早大教授論文で学会が中間報告 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
研究上の不正行為とされるものには
捏造(Fabrication)
改ざん(Falsification)
盗用(Plagiarism)
があるとされています。
”捏造がなかった”としてもそれで問題無しなのかどうかはわかりませんね。

2006年07月30日

これで社説か

MSN-Mainichi INTERACTIVE 社説:生体肝移植 ドナー保護の仕組み作りを
ドナーは現在でも十分保護されていると思います。社説として意見を表明するからには現実をよく見据えてからにした方がよいと思います。

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